ディオスコロイ計画 小説 | ナノ






 違う入れ物だからこそ、同じ魂を持ったお互いに愛を囁けるし、お互いの魂の入れ物で抱き合うこともできる。
 躰が違うことを理不尽だとも苦しいとも、私たちは思わなかった。


 隣にお互いがいて、他に誰もいない。時間と風だけが流れていき、私たちを引き裂くものもいない。
 こんなふうにずっと生きていられたら、どんなに幸せだろう。


 しかし私たちがこの世界で幸せに生きるには、他ならぬ私たちの両親と平日は必ず顔を会わせる担任がその障害になる。
 それらは決して悪意ではないのは理解できる。
 しかし、悪意が無いだけでは味方には成り得ぬのだ。悪意のない否定はまた私たちへの敵意になり、そして明らかな敵へと変わる。

 解せぬ思想への一方的な当て付けは、理解への道を閉ざし、決して交わることのできない壁を双方の狭間に造り上げる。


 その壁を崩す方法は二つだけ。
 双方から協力して壁を取り去るか、一方から壁を叩き潰すか。

 前者は、お互いが歩み寄り相互に理解しながら互いに許しあえる領域を創っていくことだ。
 お互いに考えを持ちながらも、共存を第一に考える事で一定の妥協を見いだし、その距離を縮める。


 一方、後者ではお互いがお互いに理解する事を放棄し、自らの思い通りに次への道を開くことである。
 自らを常に優先させ、確固たる信念のもと妥協による相互理解を求めない。
 それは真なる理解ではないと理解し、またそれを成すことは不可能だと確信する。


 私たちは、相互理解というものを初めから求めてはいないのだ。
 妥協と譲り合いで出来ている理解と共存を、私たちは求めてはいないのだ。

 共存を得るために、私たちが双りでいることを諦めることはどうしてもできなかった。
 母がそれを望んでいるのはわかっていた。
 担任がそれを願っているのもわかっていた。

 しかし、私たちにとってはそれだけでしかなく。
 大切な何かを失ってまでも得たいものにも、妥協しなくてはならない理由にもならなかったのだ。



 ただ、私たちがあればそれでよかった。

 隣に座っているのは、他ならないお互い。
 この屋上では其れが全てに変わる。


 ずっと浸っていたいほどの至福。
 変わらなければと何度思ったかわからない刹那。
 叶わないからこそ願う奇跡を、私たちは屋上で細やかながらも感じていた。


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