ディオスコロイ計画 小説 | ナノ






 私たちは小学校へと上がったが、クラスが同じだったため結局一度も離れる事なく過ごすことが出来た。

 他の子どもが何をしていようと関係ないと決め、ただ双りの世界を造り出す。

 そうしているうちに担任もまた母親のように、双りだけで居続ける私たちのことを訝しみはじめた。
 担任は、私たちが他人と話す事を恐がっていると勝手に思い込み、善かれと思って、必死に私たちに話し掛け、他の子ども達の輪に入るように促すのだ。
 私たちでなければ、その行為は教師としてまさに理想であり、鏡とも言える立派な行動なのだろう。
 しかし、そんな素晴らしい行為でさえ、私たちにとっては不愉快なものの一つにしかすぎなかった。

 私たちはそんなとき、いつもただ笑う。にこりと、感情無く、ただ顔の筋肉を動かす。
 そうすれば、大人が自分の言った事を解ってくれたのだと勝手に理解し、その場を去っていくからだ。

 しかし、担任は繰り返し行われる私たちの笑みに、遂にそれがその場を住なす為の物にすぎないということが漸くわかったようで、無理矢理私たちの手を引いてクラスの輪に入れようとした。
 同世代の子ども達は実に素直で、同じ顔の私たちに興味津々な様子だった。

 私たちはそんな同級生達がしてくる質問や雑談に加わりながら、担任が居なくなるのを密かに待つ。
 そんな些細な時間でさえ、双りの空間を妨げるものであり大変遺憾に感じるものでもある。
 しかし、それでも同級生達の輪に加わるのは、これ以上担任に目を付けられては面倒臭い事になる、と私たちが考えたからにすぎない。
 仲良くしよう、などと思った事など本心ではまったくないのだ。

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