ディオスコロイ計画 小説 | ナノ






 白銀の少年は愛犬の手綱を放り捨てると、直ぐ様、近くに転がっていた石で塔の入り口の鍵を壊した。
 長く変えられていなかったのだろうその錠前は、簡単にその封印を解いた。

 白銀の少年は石を投げ捨て、壊した錠前を外し扉を開く。入って直ぐに現れたのは、上へと続く長い長い階段。
 階段が続く先は暗く、偶に隙間から入る太陽の光が薄ら灯るのみ。
 足元はほとんど見えない状態にあったが、それでも白銀の少年には立ち止まる事も引き返す事も出来なかった。

 白銀の少年にとっては、待ち続けたものだったからだ。
 やっと胸の穴が埋まるかと思うと、心が逸った。
 そして、確信へと至る。

 彼は自分を待っている、と。






 漆黒の少年は塔の内部へと消えた白銀の少年に、歓喜を隠しきれなかった。

 待ち焦がれていた人が、ようやく来てくれたのだ。

 その翼ゆえ、生まれたその時から閉じ込められていた漆黒の少年にとって、あの白銀の少年に会うことだけを望み、生き長らえていたのだから。
 もうすぐ、もうすぐ、願いが叶うのだ。
 漆黒の少年は窓にもたれていた躰を起こし、真っすぐに立つ。
 扉を開けて、迎えに来てくれた白銀の少年へ正面から相対するために。


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