ディオスコロイ計画 小説 | ナノ






 その時――。




 森の中から現われたのは一人の少年。
 神々しいほどに眩い白銀の翼は太陽の光を集めているかのようにキラキラと輝いており、見ただけでわかるその柔らかな羽根はまるで真綿のよう。
 そんな翼を背負うに相応しい、眉目秀麗な少年だった。



 白銀の少年は突如現れた塔に驚く。
 深い森の中、決して入ってはならぬとされた土地にこんなものが隠されていたなんて。
 白銀の少年はゆっくりとせの頭を上へと上げていく。

 そして、鉄格子がはまった塔の窓から下を覗く、一人の少年が居るのに気付いたのだ。



 漆黒の髪に同じく漆黒の瞳。
 何物にも染まることのない確固たる決意と、揺るがない願いがその瞳の中で揺らいでいた。





 白銀の少年は理解した。
 漆黒の彼こそが、自分の中にあった空白を埋めてくれる存在なのだと。
 自分は、彼が足りなかったから今の世界に何の魅力も感じなかったのだと。



 漆黒の少年は理解した。
 白銀の少年こそが、自分を迎えに来てくれる焦がれ続けた存在なのだと。
 自分は、彼に会うためだけに生き長らえていたのだと。

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