ディオスコロイ計画 小説 | ナノ






 翼を持つ者で溢れている世界。


 ある者は白を。またある者は黒を。そしてまたある者は透明の翼を、その背中に持っていた。
 それは血筋によって形が遺伝され、色は三通りしかないものの、多種多様な翼があった。


 古い家系ほど、翼に対する執着心は熱く、その色や形までも認められるものでなくては伴侶とする事ができないほどであった。






 そんなある日、古い歴史のある旧家のお屋敷で事件が起きたのだ。
 其の家は代々柔らかい鳥のような羽根と純白の煌めきを持つ翼を遺伝しており、それに値しない者には家の敷居を跨がせない徹底された政略結婚をする家系だった。

 そんな家系でのお祝い事。

 次期当主である青年と、其の妻との間に授かった生命が産まれようとしているのだ。
 今までの診断で、妊婦のお腹の中にいるのは男子の双子。翼は生まれた時点でしかわからないが、次期当主とその家に認められた妻の子どもとだけあって、莫大な期待が寄せられた。
 其の家にはすでに二人の間に一子の男の子がおり、その子は家の名に恥じぬ美しい純白の羽根をその背に抱き生まれてきた。
 また、この世界では、双子は吉兆を表すおめでたいものであるため、双子で美しい翼を持ってさえすれば、更に家名は高く、揺るぎないものになるのは間違いなかった。






 そう、間違いなかった。






 白い翼さえ、有していたなら。


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