「藤堂さま」


嘗てヨコハマの地をそれぞれ守っていた武装探偵社とポートマフィア。

今は手を組み共に横浜の街を守るべくPDA社として活動しているが、その間には一定の距離がある。勿論不仲という訳ではないが嘗ての因縁、思想の違いなどで如何しても壁が出来てしまうのだ。

そして其れは武装探偵社というものを知らな千尋にも当て嵌まる。

武装探偵社といえば織田に背を押された太宰が人を助ける人間になるべく入社した場所ぐらいの認識しかない。
互いの長の命を狙い合ったことや逆にヨコハマを守るべく手を組んだこともあると聞かされても、千尋にとっては「そうなんだ」くらいの認識しかない。

とは云っても例えば与謝野や鏡花、ナオミといった女性陣とは仲良くしている。が逆を云えば其れ以外の──男性陣とは殆ど関りがない。時折言葉を交わす程度だろうか。

だから正直に云うと今の状況には大変困惑している。

「え、えっと…」
「……」

足元には最近社の周りに現れるようなった猫。自分の手には懐かせるべく持ってきた煮干し。目の前には仏教面のPDA社社長、福沢諭吉──嘗て武装探偵社を率いていた男。

生来人間と接するのが苦手な千尋はこの場をどうやって切り抜ければいいのか全く判らない。敵であれば一掃する選択しかないのだが、福沢は味方というか立場的なものを考えれば嘗ての上司であった森よりも上の立場という訳で。
考えれば考える程焦ってしまい声が出ない。如何しよう、助けを求めるように周囲を見渡すも勿論誰もいない。

「その猫は」
「え、」
「……その猫は、新顔か」
「!」

ごそり、と福沢が懐から出したのは猫じゃらしと煮干し。何方に釣られたかは判らないが、足元にいた猫が甘えるように福沢の足に頭を擦り付ける。其れを見た福沢が優しく口角を上げたものだから、千尋は知らず入っていた肩の力を抜いた。

「……最近、この辺りに来たみたいで」
「ああ」
「その、餌付け、してしまって…すみません」
「否、構わない。……飼うのなら協力するが」
「え、あ、その、治くんが…駄目って……」
「……そうか」

他愛のない会話をしながら二人並んで猫と戯れる。優しい時間が穏やかに過ぎていった。







「え、何してるんですか?太宰さんと乱歩さん」
「社長と一野辺が猫談義をしていてな。其れを眺めてるようだ」

「くっ…!真逆社長が千尋と仲良くなるなんて…!!」
「気になるんなら割り込んでいけばいいじゃないか!僕はそうする!」
「あ、乱歩さん!!」
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藤堂さま
今回はリクエストありがとうございました!!本編の方では殆ど絡みというか出番がなかった社長を出すことが出来て楽しかったです〜〜〜〜〜!!
ありがとうございました……!
酷い暑さです、熱中症にはお気をつけてお過ごしください!
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