──人間って、間抜けなものですよねえ。

 えっ?
 何ですか?
 とうとう自分の素行を省みて是正する気になったのかって?
 ……失礼な。それではまるで、私が野放途でどうしようもない無法者みたいじゃないですか。

 まあ、一理はありますが。
 いえね、私が申し上げたいのは、普遍的に見られる人間の愚鈍さと浅慮についてでしてね。

 しっかりと自分の置かれている状況をを把握しているようでいて、人の目は、実は殆ど何も見ていないんです。
 身近な話ですと──そうですね、誰も、まさか自分が悪徳商法に引っ掛かるなんて思っていないし、宗教の勧誘に引っ掛かかって金と時間を揺すり取られるなんて夢と思わない。それでいて、あからさまにつんのめっている人を馬鹿だ間抜けだと指差して罵るわけですよ。

 そうしたことに躓かない確固たる理由(理念ではありませんよ、念のため)を持っている人というのは、実はごくごく少数です。しかもそれは、強い信念を持った人間ではありえない。
 それは、信念を持たない人間です。
 しかも──ただ持たないだけではなく、「持たないことへ再帰した」人間だけなのです。
 もしあなたがまだ一度もこの手の騙しに引っ掛かったことが無いというのなら、それは単に運が良かったか、未だに気付いていないかのどちらかに過ぎない。自省するのが一番ですよ、たとえ、完全ではなくともね。
 幸い、踏んでも気付かないことだって多々あるのですから。気付かなければ被害に遭ったと訴えることもありますまい──踏んだところで足が吹っ飛ぶわけでもなし、陰嚢が木っ端微塵になるわけでもなし。
 けれども何より愚かなのは、そのことを字面では了解していながら、心の何処かで自分だけは、と特別扱いしていることなのではないですか。

 そう──「自分だけは」。

 この自意識に対する不自然な過大評価は悪党の恰好の餌なのですが、これだけ普遍的なテーマであっても、何故か中々人々には知覚されない。一度喪失しなければ物理的な重大さを理解できない空気のようなものでなのでしょうか。

『心が盲目ならば、目などあっても無用である』──至極名言だとは、思いませんか?













 周一さんから電話があったのは、一昨日の午後だったように記憶しています。

 私ときたら、ガラにもなく激しく動悸がしまして。上手く話せなかったんですよ。聞こえてくる周一さんの話し方が凄く柔らかで優しい感じがしたせいもあったのか──。
 その時にですね、直感的に騙されてるなって感覚が既にあったんです。嘘をつかれている、陥れられている。そういう危機感のようなもの。
 ……しかし、間抜けな話、騙し騙されるのが日常になっている我々の関係が、既に認識のミスリードになっていた。常に騙されるやもという前提が、ゆえに騙されやしないという確信に擦り代わった──間抜けで馬鹿げた悲劇です。
 この感覚を他に喩えるのは大変難しいのですが、たとえば、同じものを食べてもコンディションによって味が違うように感じることってありませんか?
 同じものがことさら美味しかったり、或いはそうでもなかったり。
 ただ、私秘体験を盆茣蓙に載せて数値化することなど当然できませんので、コカ・コーラの味は基本的に均一である、というような前提が必要なのですが。これだって、ポパー流の難癖で言いますと反証は不可能なので、或る一つの哲学的真理ではあっても、根拠の明白な科学的事実ではないのですが。事実は突き詰めても妥当性を越えはしないし、越してはいけない。
 ともかく──そうした哲学的真理でなく、あくまで高い妥当性を見積もって、私はこれをそうした自分自身のレセプターの問題だと思っていたんですね。

 その折、周一さんと、約束をしたんです。

『2月14日午後13時、駅ビル前で待っているから、食事でもしないか』

 ──だって。
 いつだって何故か、互いにどこか距離をおいてしまうことがほとんどなのに、今回ばかりは強引なほど──私の意見なんか聞いてはいないというように、甘ったるく囁くんですから。断われるわけがないでしょう。
 まるきり、馬鹿女郎。
 ──だって、実際のところ、あのどうしようもない男に夢中になっているのは私のほうなんですから、この数年来──実に、口惜しいことですがね。
 気持ちの駆け引きになると、能動性というのは大抵急に弱い立場になりますから、「やったほうが負け」なんですよねえ、この場合。

 私はいそいそと出ていきましたとも。家の者には適当に理由をつけて、今日は帰らない、なんていい加減なことを言って。七瀬なんてあきれて、お菓子を食べながら私の顔すら見ませんでしたよ。
 寒空に小鳥が鳴くのを聞きながら、私の足取りは軽かったのでしょうね。数日前に偶然落っこちてきて、介抱した小鳥の恩返しの声だろうか、なんて、馬鹿みたいなことまで考えて。

 ──結果論からの自己弁護の域は出ませんが、だからといって、全てにおいて盲目であったわけではない筈です。
 駅ビル前で、出会い頭に抱き締められた時は、幾らなんでもおかしいと思いましたよ。芝居がかっていない分芝居臭いというか……普段の態度が並べてブラフであるせいで、その要素が抜けるとまたブラフになるという悪循環、これもまた職業病というべきなのか──などと熟と考えていたら、人目も憚らず彼は私の手をとって歩き出しました。たちまち私はもう、何もかもがうわの空。
 何処へいくのか、とも訊けないまま、私は繋いだ手を振り切ることはできませんでした。この男の挙動が不可解なのは今に始まったことではないし、スクープされて困るのは彼のほうで、リスクを承知しているなら好きにすればいい──と自分に言い聞かせた……という自己欺瞞のスパイラルを曝露するのは今だけですよ?
 ──何しろかの夏目少年の前では理解ある善人のふりをして、裏では平気でヤミ金業者を呪殺したり斧を振り回したり家屋に不法侵入したりして平然と芸能活動なんてやっている正真正銘の偽善者ですからね。人畜無害な人間とは、正直まるきり対局に位置する。話題がスクロールしますが、つまるところ彼は、夏目少年を謀っていると言ってもいい。情報開示の正確性や恣意性の排除という点では、はっきり言って私のほうが──的場のほうがよほどまっとうなくらいです。
 だから私としても、どう解釈すればいいのか戸惑うこともあるわけですよ。価値の無い相手なら解釈も何も必要ないのですが………………………──おっと、今のは無しです。
 いえ、その──価値、という言葉に誤幣が生じそうなのでね。価値あるものとはイコール、『善いもの』とは限りませんので──そこはどうか、ご理解いただけますよう。

 独り懊悩しては悦に浸っている間に、周一さんは私の手を握ったまま大通りから小路に逸れて、細い通りを潜っていきました。私はあまりこの辺りは詳しくないのですが、細い小路にも幾つか店舗があって、ちょっとテレビなんかで見るバルセロナのゴシック地区の裏路地みたいになってるんですよ。
 ──知りませんでした、こんな所があるなんて。山手に向かって緩く坂道になってるんですが、促されるまま振り返ると、市街が綺麗に見渡せるんです。
「……夜だともっと綺麗なんだけどなぁ」
 本気で残念そうな周一さんに、私は思わず笑いました。
「それならディナーにすればよかったのに」
「いやあ、そういうわけにいかなくて。その、スケジュールの都合がね」
「それは残念」
 くつくつと笑って、手袋をしていない周一さんの手を、私は両手で包み込みました。

 彼、大きいんですよ、手が。

 骨張って、ゴツゴツしてて、長い指。スマートな見た目とは少しギャップがあるくらい大きな手。ついつい暖めてやりたくてその手を包み込んだ瞬間、まあ後込みしない動作で額に口づけられて、私は──私ときたら。
 もう何度体を重ねたかも分からない相手、とんでもない痴態を散々さらけ出した相手に、まだこんな生々しく新鮮な感覚を覚えるのかと感嘆したほど──愛しさ、のようなものを覚えて、私は。

 その腕に、飛び込んだんです。

 どうしようもない錯綜と、昂る情動と、その「愛しさ」を携えて。
 そして、その抱き返す腕の優しいことときたら、言葉に翻訳するのも難しい。
 もしそこいらに通行人がいたら、間違いなく恋人同士だと思われたでしょうね。
 けれども、値踏みするようで申し訳ないのですが──周一さんの付き合い易いところといえば、いちいち行為や行動と結論を強要しないところ──たとえば「抱擁は互いの愛情確認作業である筈だ」という類いの、男性特有の短絡的な帰結を微塵も露出しないところでしょうか。反射的な認識は私にも──誰にでもありましょうが、彼はきっと、プライドが高いのでしょうね。良い意味で。

 かくして周一さんに伴われて、路地の中にある寂れた、と洒落た、と足して二で割ったような小さなレストランに足を踏み入れますと、急に暖かな空気が流れてきて、私はホッとしました。
 周一さんが店員と話している間、店内を見回してみると、綺麗なタイル張りの壁やモザイクの床は、欧州のようでもあり、東洋的な雰囲気もあり──射光がちょうどいい具合なのか、それこそ地中海沿いのレストランのようにも見えました。昼どきを過ごしたせいか、客はいません。席は四人掛けが四席とカウンター。カウンターの店員さんはアラブ系の方でしょうか。
 窓際の席に通されて少し待つと、予めセットアップしていたのでしょう、小さなグラスに注がれた食前酒と、サラダとパンが運ばれてきました。
 それにしても、その焼きたてのパンの匂いといったら──言葉が野暮になるくらい芳しい。
「………美味しいですね」
 もっちりとした食感の香ばしいパンに、思わず呟くと、周一さんは小さく笑いました。
「トウモロコシの粉を使ったパンだって。ポルトガル料理なんだけど、なかなかいいだろう?」
「……」
 ──ポルトガル?
 もう一度店内を見渡すと、タイルやモザイクを使ったオリエンタルな雰囲気と、かつてのイスラーム文化の影響を思わせる調度。全体の雰囲気は欧州的でありながら、華美さを排した落ち着いた様子。文化の融合、ああ、あのタイルの細工はアズレージョといったでしょうか。なるほど、ポルトガル──。
 ポルトガル、スペインといえば、10世紀以前のイスラムの侵略によって混血も促進されたと聞きますからね。すると、カウンターの方も現地の方なのかもしれません。
 メインディッシュの、じゃがいもと海産物、様々な野菜を煮た料理も実に地味豊かで美味でした。デザートは簡素に新鮮なフルーツとコーヒー。変に凝ったものでない、これも実に好感です。
 それから、コーヒーの端には、美しい細工の小さなチョコレート。今日がバレンタインデーだからでしょうか。私は思わず微笑んでしまいました。

 それにしても、余り口煩く言った記憶は無いのですが、付き合いが長いと好みも知れるものなのでしょうか。まあ、ポルトガル料理を口にするのは初めてなのですが──。
「ねえ、静司」
「はい?」
「どうして、来てくれたの?」
「は?」
 ──あなたが誘ったんじゃないですか、と楯突こうとして、私は、俯いた周一さんの瞳に、言葉を失わずにはおられなかった。
 今にも、泣いてしまうのではないかと──そんな表情をしていたのです。発言とシチュエーションと事の発端と、それぞれに納得いく互換性のあるパーツが見つからない。私は──。

 ……焦りました。

「周一さん、おれは」
「君は」
 同時でしたが、私は引き下がるしかなかった。私のキャパなんて、所詮この程度なんですよ。惚れたら負け。バカみたいでしょう。
「……君は──『嘘』の語源を想像できる?」
 知っているか、ではなく、想像できるか──どこかしらあやふやな問い掛け。
 墓穴を掘るぞ、という理性の注進に背を向け、景気付けのつもりで小さなチョコレートをくわえると、その甘い香りに共鳴するように、頭の中で詰問と化す奇妙な質疑。
「嘘──ですか」
「そう」
「最古であれば………長嘯──音声巫術──発する声を何かに見立てるこてによって呪的な恩恵を受けた、という中国の強力な古代呪術があった、とは聞きますね」
「へえ」
 彼は笑いました。
「ですが、これは大変強力なもので、明代の皇帝によって禁じられたとか」
 ──無論、人間の精神構造としては嘘(翻っては真実)という概念が先にあったことは相違いなく、これでは答えにはなりえない。私は動揺を抑えたまま続けました。
「日本に『嘯く』、という言葉がいつ頃根付いたかは知りませんが、狂言面にも『嘯吹』というものがありますね。これは間違いなく中国の長嘯の影響を受けている。長嘯も嘯吹も、動物の鳴き声になぞらえて呼び掛けるという性質を持つからです。現代の嘘、という言葉には、これらのもつ象形的な意味合いが少なからずあるのではないかと感じられるのですが」
 息を吸う。
「──これは飛躍しすぎでしょうか?或いはやはり、嘘という言葉から生まれた亜種の概念と考えたほうが理にかなっているのか……」
 そして吐く。
 嘘だ、という弾劾には、「お前は何かを装っている」という指摘を暗に感じ取ることが度々あるのに対し、偽りだ、という弾劾には所作がある、裏がある、という端的さを覚える──という微妙なニュアンスの差異があり、少なくとも、使いどころとしては同じではない──と。自身で納得いく限りでは、そういう差異でしょうか。
「…………」

 ただ、ふと脳裏に、ある仮説が過りました。当意即妙。そしてそれは、馬鹿げていればいるほど真実のように思えて、私は目の前に座る周一さんを真正面から見詰めてはなお、どこか悲嘆にくれるその憂いに満ちた表情に見とれて──ほう、とため息をついたのです。
 まったく、どうしようもありませんね。この認証性というものは。
 嘘にも、何にも、かなわない。死ですら認証性の重要度を越えることはできないのですから。
「……うそふく、というのは口笛の古語だと言われていますね。ウソという鳥は元来「嘘」ではなくその口笛のような鳴き声から「ウソ」の名を戴いた、と。……けれど、これらはどれも派生言語の分岐としては無関係ではない。そもそも長嘯は口笛であったとも言われていますし、それ自体が『嘘』の資質をはらんでいますから──」
 嘘。
 その語彙をピックアップしたのは、無意識ではありませんでした。──私は残酷なだけではない。
 時に……ひどく臆病なのです。自分でも、うんざりするほどに。
「……ではもう、気付いたんだね」
「ええ。あなたが、気付かせた」
「……私を、祓うかい」
「それじゃ、助けた意味がないじゃないですか」

 ──それは、数日前でした。
 寒さにやられたか、餌に窮してか、庭先に落ちてきた雄のウソの成鳥を数日間給餌して、放してやった、あれが。
 ──あの、美しい色をした、小さな鳥が。

「………あなたが、あのウソだとは」
「君に、逢いたくて」
 私は、思わず吹き出しました。嘲ったのではなく、ただ、愛らしい──と思われて、あのどこか凛々しく、色鮮やかな姿形と重なってなお、ちぐはぐな印象とその執念が、余りに可愛らしくて。
「もう一度だけでも」
 私はとうとう声をあげて笑ってしまいました。
「ふふふ。情熱的だと思いましたよ。夜がいけないというのは──鳥は夜目が利かないからですか?」
 けれども、無言で頷く姿は、あの人そのものでした。

 ──私は、それきり、
 何も言えなくなりました。

 もしも相手に害意があれば一瞬で話のつく状況、力ある祓い人と──いわば動物が化生した妖が。


 何分も──何十分も。
 ただ、黙ったまま。


「…………静司」
「はい」
「ありがとう、もう行くよ」
「え?」
「ウソついて、ごめんね」
 私は漸く顔を上げました。
 周一さんの──あの大きな手が、分厚い磨りガラスの窓を少し開けると、丁度光のカーテンが翻るように私の視界を覆ったのは、偶然だったのでしょうか。変化の瞬間を、この眼で視ることはかないませんでした。

 ──あとは、ご想像通りです。

 私は、レストランの奥の席に、独りきりで取り残されて座っていました。
 こればかりは白昼夢で片付けることもできない。私、いくらランチコースでも、二人分食べる度胸は無いですよ。
 ふと見ると、周一さんの座っていたほうのコーヒーに添えられたチョコレートが無くなっていました。
 確かに、ウソの小さな嘴でも持っていける大きさでしたね──そんなことを思うにつけ、軽い目眩と、不可解な希求心に囚われる。これは、一体何なのか──。
 やがて、水を注ぎに来た給仕の青年から、不思議そうに「おや、お連れ様は」と流暢な日本語で問い掛けられて、私はニッコリと笑い返しました。これで第三者の証言が得られた──と。
「仕事の都合で、先に出てしまいました。申し訳ありません」
「左様でしたか。失礼を」
 私は携帯の着信履歴を確認しましたが、予想通り、一昨日の通話の履歴など、どこにも存在しませんでした。
 危ない──先の店員の一言が無ければ、せん妄で片付けられるところです。悪意なき妖でも、ほんの僅かな認識の齟齬、それが弱いところを突いていればいるほど、脆弱な人間──盲目の心には、時に致命傷にさえなり得る。


 どういうわけか、会計は既に済んでいました。
 私はふらふらと店を出て、近くの公園──小さな見晴らし台に腰掛けて、しばらくぼんやりとしていました。昼過ぎの青い空に、冷たい風──砂浴びをする雀に、じき春が来ますよ、と語りかけ、遠くから響く笛のような音を聞き取ろうとするも、それが何の音なのかを判別するには余りに遠すぎて。

「さっきの店、確かディナーもやってましたよね……」

 はっきり営業時間を確認したわけではないのですが、時間が合えば、今日は食事にでも誘ってやろうか──と。
 電話帳の中で一番重要な数字列を引っ張り出して、かけようか、かけまいか、散々悩んだ挙げ句、あっさり繋がって思わず切ってしまった自分が滑稽で、暫く笑っていたのですが。
 律儀に折り返してきた電話の声音が、どこか期待しているように聞こえて、私は今度こそ、希望的観測と現実との境界を見失っているのだな、と己自身に軽い絶望を覚えたのでした。

『静司、どうしたの、急に』
「──周一さん、いい店を見つけたんですが……いかがです?久し振りに、二人で食事でも」
『今夜かい?』
「今夜です。7時に駅ビル前でどうですか?」
『……仕事の話は無しだよ』
「余計な勘繰りは無用です。それじゃ、お待ちしていますよ」

 簡潔なやり取り。
 頭上で鋭く風を切る気配と、ヒューと口笛のように鳴く鳥の声。
 樹の中から続く、止まない旋律が心地よいそれは、唄のようで、愛のようで。

 ──嘘のようで。

「……謀られた、と言うべきなのでしょうかね」
 晴れ渡る空の下に、見渡せるのは翳りの無い街並み。それさえも嘘のように見えるのは、きっと、無くすことに慣れすぎた眼には陽光が眩しすぎるから。


 ──さよなら。
 かわいい夢見鳥。


 私は、夜の民なのですよ。
 心が盲目ならば、目などあっても無用である──そればかりか、目も、心でさえも不要なる、闇の眷族なのですから。
 それでも心を求める、私は滑稽極まる外道なのです。
 そんな私に、嘘と後ろめたさだけが、愚かな人間であることを教えてくれるのですよ──ええ、まさしく、皮肉なことにね。




夢見鳥

2015/02/14 聖バレンタインデー特別編


Happy Valentine's Day!

【了】


作品目録へ

トップページへ


- ナノ -