もし、もし。
皇毅さんが逆トリップしました。


「いらっしゃいませぇー!」

「…………何だここは」

服装など見たことも無い、よく分からない空間。ざわざわと人が大勢この空間の外で行き交うのが見える。透明な箱詰めにされたみたいだ

「はい、どこでもショップ海老店にお越し頂き誠に有難うございます! こちらでは携帯電話の最新機種からお子様お年寄り向けの楽々フォンなど取り揃えております。
本日は機種変更ですか?ご新規様ですか?只今他社乗り換えサービスで…」


皇毅に遭遇した店員はというと、彼の服装に古代中国調の民族衣装かしら?と思いながらそれをおくびにも動揺に出さずつらつらと言う。


「…よ、よくわからないが、これは何だ?」


皇毅は側にあった携帯見本を掲げる。日本語で店員はほっとした。



「そちらはお子様向けの丸いデザインで、色はピンク、水色、オレンジとございます。お子さんと離れていても、GPSで居場所が分かります。インターネットフィルタリングは初期設定で強となっておりますが、保護者様の意向で変更可能です。お電話もできますよ」


「おでんわ……?」


首を傾げた皇毅に店員は小さく笑った。


「はい。遠く離れていてもお話できます!」


「……操作方法の分かりやすいものを一つ見繕ってくれないか?」


「承りました。少々お待ちください」


そうして手続きの書類やらを用意していたのだが、作業をじっと見ている皇毅に気まずくて店員は話しかけた。


「電話したいお相手、いらっしゃるんですか?恋人だとか、ご両親だとか」


「…………」

「ど、どうされました?(きゃー、まずい事きいちゃったー?!)」


「父、か……(遠い目」


(……よ、よく分からないけど男性へらしいわね)


「お待たせ致しました。こちらは文字が大きくてみやすいもの、こちらはボタン大きく操作楽なものです。お気に召すものございましたでしょうか?」


「…では、こちらのを」


「色はブラック、シルバー、ブルーからお選び頂けますが」


「………???!」


「ええと、此方の色がございます」(物持ってきて)


「あ、ああ。では青を…」


「かしこまりました。契約は新規登録でよろしいですね? 身分証明書などお持ちですか?……って、あれ」


先ほどまで厳めしい面しては大事な人のために悶々と携帯選んでいた男性は、まるで春の小風が通り過ぎたようにして消えていた。白昼夢だろうか?


「――あっ、やられた」


店員はぺしりと自分の頭を叩く。用意していた青の携帯が消えている。後で店長に大目玉食らうだろう




一方皇毅は、一瞬に景観変わった世界に戸惑う。


(先ほどまでの、妙に生々しいのは――夢、か?)


しかし、地面みて目を開く。地面に落ちていたのは、青塗りの機体。


手にとった重みは間違いなくここに先ほどまでの出来事が本当であったことを示す。


皇毅は早速、その機体についた緑の大きな「通話」ボタンをぽちりと押し、「でんわ」する。


「旺季様――」


もう会えないところへ、遠く遠く離れたところへ、いってしまった彼へ


















通じたのかどうかは、ご想像にお任せします。
タイトル由来はご察しの通り、「もしもし」と「If…If…」掛けてます。


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