「春の国の王様は、好きな女の子を追いかけ回してるだけで、実際に国を動かしていたのは――」
春の国一の宰相、鄭悠舜
にこにこと暖かい笑みを浮かべる彼に、その場の全員の視線が集まる。
「まさか、貴方だったなんて…」
「でも、どうしてっ!」
表情を歪めたポテトに、悠舜はくすりと笑った。
「簡単な話です。私は――
先王の滅ぼした…冬の国の生き残り、なんですよ」
そう言った悠舜の表情は一瞬にして氷のように冷たいものになっていた。
*
悠舜「ふっ、全て春になってしまえば四季など無くなり、春もやがて消滅します」
悠舜「全てが無に――そして冬になる」
そう言い残して悠舜は彼らの前から姿を消した。
(「春がくる」)
そう、あの人は楽しそうに言った。
でも、それももう終わり。あの日から、春がきても己の凍った冷たい心は溶かされないまま。己の心の中は吹雪いて、ずっと、冬のままだった。
次の冬の終わりには、
次の、冬の、終わりには――きっと何も残らない。
悠舜「冬が終われば――全てが終わる」
春色四男「いや」
悠舜「――っ?!」
春色四男「春が、来るんだ」
劉輝「そなたの庭院の桜も、きっと咲く」
秀麗「……ええ」
枯れ木を目の前に、二人
春「くっ、思ったより冷た――」
花吹雪を包むように及ぶ冷気に、春色四男は凍ること覚悟し目を瞑った。が、いつまでもその冷たさが己に届くことはない。恐る恐る、目を開いた先には――
芋「いつも邪魔し役の貴方に、最後にいいところだけもってはいかせない!」
唐「主役顔してんじゃないですわよ!」
駆けつけた二人に春色四男は呆然となったが、頬叩かれハッとする。
芋「四季を無くしはさせない!」
春「春も、夏も、秋も、冬も、巡るからこその美しさ――そうだろう?」
その春色四男の言葉に、ポテトとペッパーは、やっと分かったかと小さく息をついた。
悠舜「………」
ぱちり、と目を開けた悠舜は、今までみていた夢の内容を思い出して額をおさえた。
悠舜「なんで自分の夢なのに私が悪役なんですか…」
悠舜「その春が憎らしい!」
悠舜「私の冬は、終わらせないッ!」
とか言うの似合いそうだなー
何気に悪役させたい、そんな悠舜。
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bkm