ソードアート・オンライン
『真紅の女神』
Bテスト版で公開されていたエリア範囲を全制覇していた有名ユーザー。アバターは女性、ワインレッドの長髪、紅眼。服や装飾も全身赤。所持する大剣の刀身も黒みがかった赤。アインクラッドの攻略にも期待されていたが、ゲーム開始時から音沙汰なく、製品版には参加していないと憶測される。


「……そりゃあ、あれだけ派手な格好してる女性の正体が、こんな地味男だとは普通気付かないよなー」


手鏡によって素顔になった櫂兎は、腕を組みうんうんと頷いた。ちなみに彼は、現在地味かつ高度な収集クエスト消化中だった。製品版が始まってまだ数日のため、全体的に低レベル帯の人間ばかりで、このあたりはさほど経験値の効率も良くないくせ高レベル向けの敵ばかりで櫂兎の他には誰もいない。


「でんしゃごっこー」


なんということはない、敵を複数集め、ついてこさせているだけだ。結構な数の群れができたところで、片手剣一振りで全体を一掃する。魔法も使用しているのでチートじみているが、ゲームマスターが登場してきたことはないので、人目につかなければ問題ない。



ソードアート・オンライン





キリトはその日、情報屋から不思議な話を聞いた。


「プレイヤーがモンスターに致命傷受ける寸前に、モンスターの消えるバグ?」


「っていっても、起こったり起こらなかったりで、起きた場所も様々、助けられたユーザーも多種多様」


何が起きてそうなるのかはわからない。しかし、消えたモンスターは何者かによって倒されたものとして処理されるらしい


「通り魔ならぬ通り『魔退治』だったりして」


その声は、突如として二人以外から発せられた。


「は?」


情報屋とキリトの間にいきなり顔をつっこんできた男に、二人が真の抜けた顔になる。男はそんな二人も気にせず言った


「プレイヤーの体力の赤ゲージに反応して颯爽と現れてモンスターを倒して去る…とか、格好いいと思わない?」


情報屋は面倒な奴に絡まれるのは御免とすぐに立ち去る。キリトは逃げようにも男にニコニコ見つめられて、うまい逃げ文句がみつからない


「う、えーとあの、その…」


「久しぶりだねキリト、B版振り」


「はっ?」


「この顔じゃわからないのも無理ないか、そうだなぁ…」


そこで男は腕を組み、急に声色、というより声自体を女声の様なものに変えた。


「私のことを忘れたなんて言わせないですわよクロ助」


それは、やたら黒を基調とするアバターを着ていたキリトに対するあだ名であり、そう呼ぶのは一人しか存在しない――


「――っえええ?! 真紅の女神!?」


「だからその痛々しい名で呼ぶなですわ、華蓮という名がありますのに…ってそっちは女装名だから俺のことは普通に櫂兎って呼んで?」


「……」


「何落ち込んでんの」


「ネカマだったなんて…」


キリトはふるふるとショックに打ち震えた。

28 / 56
飛ぶ計画
Prev | Next
△Menu ▼bkm
[ 戻る ]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -