緑風は刃のごとく 50
劉輝は、梦須の申し訳なさそうな顔をみて、首を横に振った。


「悪かったのはこちらだ、余が早計だった。
華蓮が後宮を退いてから、ずっと消息が掴めないものだから、つい繋げて考えてしまった。
梦須が質問する側だったのにな、すまない」


『消息を掴めない』その言葉に、リオウは眉根を寄せたが、結局それについて訊くのはやめたらしく、もそもそと茶を飲むのを再開した。


「まー気にすんな気にすんな。俺は気にしてねえから。仕方ねぇよ、彩雲国じゃあ紅茶って珍しいもんなァ」


その、まるで元から紅茶の存在を知っていたかのような語り口に、劉輝は目をまるくする。


「異国では、珍しくない茶なのか?」

「ま、そうだな。店頭で販売もされてるし、飲食店でもでてくるし、紅茶専門店もあるくらいだ」


そんな話は初耳だった。


「……梦須は、詳しいな」

「色々な場所には行ってるからなあ。伊達に歳とってないぞ」


ケラケラと笑って言うその言葉には、何か含みがあるように思えたが、それが何かは劉輝には分からなかった。







「なんだそのトンデモ女官は…」


ひとしきり彼女についての話をきいたリオウが、思わずといった風に漏らす。


「全くだなー」

「ふふ、凄いだろう。何せ、華蓮だからな!」


我がことのように話す劉輝の顔は、どこかゆるんでしまっている。


「普通そこまで目立つ真似すると、謀殺暗殺ありそうなものだけどな」


首を傾げた梦須に、リオウがどこか呆れた声で言う。


「殺しても死ななかったんだろう」

「ぶ、物騒な話はやめてくれ…」

「案外、消息が掴めないのは本当に死んだからというのもーー」


顎に手をやり、リオウは呟く。劉輝が明らかに落ち込むのをみて、梦須は少し息を吸うと、深く、深く吐いた。それから両手をパンと打った。目をまるくして、一斉に視線を向けた二人に、梦須は面倒臭そうに言う。


「生きてる生きてる、ピンピンしてるって」

「やはり梦須は華蓮を知っているのだなーっ!? 嘘つきは舌を引っこ抜かれるのだぞ!」


そう言って梦須の頬に掴みかかる劉輝の手を、梦須は軽くいなしてからきっぱり告げる。


「知らーん!」


劉輝とリオウがずっこける。梦須はいつもの調子でけらけらと笑った。


「けど生きてる。これは勘だがな!
しかし、俺の勘はあたるんだ」


ニヤリと梦須が笑ってみせると、劉輝もつられたようにへらりと笑った。

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空中三回転半宙返り土下座
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