6号棟の方へ案内され、ほかの受験生たちとも対面する
「ともに頑張る仲間として、よろしく!」
今年の受験生らしい部屋の先客は、訪れた4人にさわやかに言い切った
「よろし――」
当たり障りなく悠舜がそれに返そうとするのを黎深が遮った
「嫌だな」
「黎深!」
咎める言葉にもふん、としか返さない
そうか…興味ない人間はぺんぺん草にしか見ないとかいってたけど……ぺんぺん草と悠舜が仲良くしてほしくないのか…
子供か、こいつは。
険悪なムードが漂うのもお構いなしに黎深が言葉を放つ
「腹が減った、夕餉はまだか」
「あー、僕たちはもう食べたんだ。一応この6号棟では共同生活ってことで食事は当番で―――」
「そんなこと聞きたくもない」
わがまま大王の一声一声が、その場の空気を凍らせていく。
笑顔ながら内心黎深を叱りたさにふつふつとしているであろう悠舜をなだめる
「じゃあ俺が作るよ。黎深は荷解きでもしてれば? えーと台所どこです?」
話が収まりそうだと助かったという顔をした彼は右を指さす。
それに苦笑いを返して俺は夕飯の準備にとりかかった。
やっぱりこういうのは中華の方がいいんだろうか、普段一人もそもそ好きに洋食和食作って食べるものだから彩雲国の一般家庭料理がわからない。とりあえず天心飯とあんかけ、プルコギっぽいものをつくってみることにした
料理途中で、台所の外でなぜか叫び声が聞こえた。顔をのぞかせて様子をうかがってみるが、黎深が「お前は飯を作ってろ」と押し戻してくるので何があったかわからない。
悲鳴は、多種多様に、呪いがどうだの鬼畜生だの生きて帰りたいだの恐ろしいものだった
それをBGMに作り続けるのは至難の業だったが、気になって覗き込むたびに黎深に視界を遮られ、そして時が経つごとにだんだんいい顔になっていく黎深に、俺はその叫びたちの意味を察した
できた料理を卓に持っていけば、先程までいた人たちがみえない。
そして満足そうな顔をしている黎深に俺は聞く
「他の人たちは?」
「なにやらほかの棟へうつるらしい」
「へえ」
何があったんだとは聞かない。疲れたふうな鳳珠とぐったりした悠舜にご愁傷様と視線を向けながら、席に着くのを促した
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bkm