外の町を歩けば、何故かばたりばたり人が倒れ屍がのさばっている。思わずぎょっとしたがよく見れば死んでない、気絶だ。
「何でこんなことに…っ、大丈夫ですか?!」
だが当たりの人は気絶しているというのにどこか幸せそうな顔をしている
集団催眠薬の類か?!
慌てて布を口に当てるが、変なにおいもないしへんなきぶんにもならない。
何かがおかしいなと思いながら屍(違)を踏み越え家の方向へ進む。
と、屍の中に唯一の生存者と思われる三人(だから違う)が立ちつくしていた
「よかった!生きてる人がいたんだ!!」
駆けよれば此方を向いていた2人は、杖を持った青年は俺に気付いては慌てた風にし、扇子を持ち妙に偉そうな態度の青年は口許を開いた扇子で隠し目を細め、俺に背を向けていた長髪のその人物は、アジアンビューティーなそのサラサラの髪を揺らしこちらを振り向いた。
おう、まぶしい
なんというか、その人物はとてつもなく美人さんだった。まあ俺の妹の美人かつかわいさには負けるが
「…私の顔を見てなんともないのか?」
「え? 何が? すっごい美人だとは思ったけど俺の妹ほどじゃないと思うし」
その言葉に杖を持っていた青年はそんな馬鹿なと言った顔で俺を見る。
美人さんはというとさらに驚きで目を見開き、友人になってくれとせがまれた。
別にいいけど、っていうか俺でいいの? ときけばぶんぶん首を縦に振る。
「そういや俺の名前、棚夏 櫂兎ってんだ。えーとお前は…」
「黄 鳳珠という」
その名に屍の意味をやっと理解した
続いて杖の青年が鄭悠舜と名乗り、隣の青年を促すように小突く。扇の彼は仕方が無い、という風にパチンと扇を閉じ音をさせ、素っ気なく「紅 黎深」とだけ言った。
鳳珠は墨がきれてしまったこともあり、夜遅くまでしている花街に、念入りに顔を隠し墨を買いにきていたらしいのだが、目の前で転んだ老婆の肩掛けが汚れてしまったものだから顔を隠していた布を渡してしまったのだそう。そしてこの騒ぎになったらしい。知ってはいたけど…いい奴すぎて俺、自分が情けない。ちなみにその騒ぎに黎深は、知り合ってから今の今まで何にも動じることのない悠舜を驚かせてやろうと、悠舜はそんな黎深に引っ張られて来たんだとか。もちろん悠舜はそれでも動じることなく、騒ぎの主鳳珠の素顔を見てにこにこいつもの笑みを浮かべ、騒ぎの鎮静を図った。そこで理由を知った悠舜が、鳳珠に墨を譲ることで一段落したところに俺がきたというわけだ。
俺も国試を受けることを知り、鳳珠は倒れない受験生がいることに安心した風だった。俺はというと明日彼らと待ち合わせ共に予備宿舎に入ることを決めた。
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