年末と国試の関係上、貴陽の町はにぎわいをみせていた。
昼はもちろん、夜も活気が絶えない
そして俺はというと―――
「お酌いたします」
「ありがとー」
盛りを見せる花街、嫦娥楼でお酒飲んでました。
いや、あの、やましいことは何もしてないからね!
なんか服の布の染料のことで、素材元提供してくれてるお偉いさんとお話しすることになって、呼び出された先がここだっただけだかんね!
と、横を通ろうとした子にぶつかってしまった。転びそうになる子をふっと抱き支える
「も、申し訳ありません!」
「大丈夫大丈夫、気にしないで。ところで娘さんお名前は?」
まだ少女のあどけなさ漂う女の子、しかしところどころ大人の女性を思わせる色気がうかがえる
「はっ、はい! 胡蝶と申します」
思わず口にしていた酒を吹き出しそうになりむせる。この子がのちの胡蝶姉さんだと…?!
「そうか、胡蝶ちゃん、君きっと素敵な女性になるよ」
「…ありがとうございます」
ぽっと頬を染め恥ずかしげに笑った。かわいいな!
これがそのうちあまたの男どもを誘惑する妖艶な笑みを浮かべるようになるのか…う〜ん、信じられん
「では私はこれで」
「うん、引き留めてごめんね」
そうして胡蝶と別れ俺は染料の話に入る
「孔雀石のような色が作れそうにない、ですか。藍と黄をかけ合わせちゃだめなんですか?」
「め、めったなこと言わないで下せえ! 禁色を掛け合わせなんたあ…」
「そう、ですか。うーん…しかし葉っぱの緑とは違いますもんねぇ…」
唸る染料師さん
「ここはいっそ濃い緑を濁らせてください。まだらになっても構いません、むしろ今回はそれで行きましょう」
「まだらなんて…」
「かえって味になると思いますよ」
にこにこと俺が言うので渋々納得した風にして、取り決める染料師さん。
話はそんな感じで終わった。
っていうか相手に代金奢らせてしまってなんか悪いことした気がした。
△Menu ▼
bkm