「初めて見かけた場所は、その、外朝だったが…誰かとの逢瀬だろうか?」
瑤旋と?逢瀬?
想像して鳥肌がたちプルプルと震え首を振る
「ただの友人に愚痴を言っていただけですわ」
「そう、か!そうか! それでは、第六公子と共にいたのは、何故か?」
「世話役を、させて頂いておりますの」
「……確か、貴女は筆頭ではなかったか。第六公子の世話をするような身ではなかろう」
「王から打診がございましたの。その頃は、まだこの役にも就いておりませんでしたわ」
王、の言葉に旺季は少し雰囲気を変えた。なんだか、鋭さが増したとでもいうか、瞳の奥の炎が揺れたとでもいうか。そんな感じだ。
彼のその真剣な目は、真っ直ぐにこちらを射抜き貫くようで、身動きがとれない。
やがて彼は、口を開いた。
「華蓮殿…私の嫁にこないか」
「………………全力で遠慮しますわ」
…ものっすごく落ち込まれた。
「許嫁か、それとも気になる相手がいるのか?」
「おりませんが、お断りですわ」
さらにしゅんとする旺季。これじゃ、まるでこっちが悪いことしているみたいじゃないか!
「あの王の妃にと貴女が考えているのならば、貴女のためにも、させられない。不幸になるだけだ。私の妻という立場になれば、守ることができる」
「あの、ええと。考えておりませんから、ご心配は要りませんわ。彼とは、そのような間柄ではございませんもの。
私達こそ、まだ見知った仲ではありませんし、第一、その、貴方は、ご婚姻なされていませんでしたかしら…」
「妻は…死んだ、娘も1人、嫁に出て家にはいない」
「……あの、無遠慮に口を利いて申し訳ございません」
「いい、気にするな。若い者に後添を頼むなど、そちらはそちらで貴女によくない噂が立ちかねんしな。
……一目惚れ、だったのだろう。自分でもまだよく分からないが、華蓮殿が好きだ、愛している」
男から告白され不快指数度100の俺は泣きそうになりながらも、まだ男とばれてはまずいので必死に取り繕う。
「お友達でいましょう」
きっぱり言う俺にかなしそうな目をする旺季。この人もこんな顔するのか。
「で、では…お互い、よく知らないことですし、お茶飲み友達から始めましょう?」
最終的に行き着くとしてもお茶菓子食い友達程度でありたいな、うん
「…………ああ」
妙に間があったあと、旺季がこたえた。
そうして旺季とは何ヶ月かに一度、一緒にお茶をするだけという奇妙な関係が、こうしてずっと、これから続くことになる。
必要以上にお互い近づくことはなく、彼から触れてくることも、あの一度きりだった
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bkm