試されて試されて 07
「ふう…」

一通りの義務連絡や女官たちの家元からの手紙の返信を終え、筆をおく。


「お疲れ様です、華蓮様」


「ありがとう珠翠〜ッ! ああー! 私の癒しー!」


気を利かせてお茶を淹れてくれるところがまたなんとも愛おしい
抱きつけば恥ずかしがりつつも嬉しそうに口元をほころばせた。最近珠翠ちゃんは日に日に美少女から美女へと変貌している。お母さんちょっとさみしいよ


ここのところ忙しく劉輝にも会いに行けていない、劉輝にはしばらく行けないかもしれないとは言っていたが、ここまで忙しくなるとは思わなかった。
というのも何かよくわからないが宮廷内では、第一公子派と第二公子派といった風な不穏な動きが最近になって活発化しており、女官たちにも政治的利用方面で連れて行かれそうになるのだ。
本人の意思関係なく手を回されていることがあるので、それを救い上げるのに必死なのである。

しかし、そうやって必死にやって、しかもちゃんと助け出したりしちゃうものだから、そろそろ、『こいつ邪魔だ』なんて目をつけられる頃なんじゃないかとびくびくしている



そうしているうちに劉輝の母がついに亡くなったことを知り、何かせずにはいられないで、このまえつい櫂兎としてふらりと偶然を装って清苑に会い、
『敵ってのは倒すだけじゃなく仲間にしてしまうのも一手だ』なんてらしくもない忠告のようなものをし、あえなく撃沈した。思いっきり不審がられ、拒絶された。もう俺立ち直れない


「華蓮様、こちらのお仕事は私にもできますわ。代わりにいたしますから、今日は劉輝様のところへお早めにお行になってください」


「…ッ、珠翠いいいいいいい」


がしと抱きしめる。さすが珠翠、俺のことわかってる。


「じゃあ行ってくる、ごめんね。後はよろしく!」


どうでもいいが毎日女装して柔らかな言葉使っているせいで櫂兎として振る舞うときオネエ口調になりそうでとってもこわい。




劉輝が今頃遊んでいるであろう庭に向かうが、いつもより多い気配に眉をひそめる。兄たちが劉輝を虐めているか、それとも清苑公子が来ているのか。前者だったらとりあえず参加者全員殴って黙らせようなんて思い、その場に出る。



清苑だったので安心して、しかし顔は見えないよう細心の注意を払って近づいた


そしてそこで、現状が安心できないものであったと気づく


清苑の後ろには―――旺季

劉輝の手のひらに、お手玉。


目の前で起こることに戦慄した


「劉輝、これから冬は寒くなるから、風邪をひかないように暖かくして過ごすんだぞ。火鉢でやけどしないように気を付けて。それから――」


つらつらと。『別れ』の言葉を劉輝にかける清苑。



その言葉も、終わる。


「清苑様、そろそろお時間です」

旺季の言葉に清苑はそっと劉輝を抱き下ろした



「行ってらっしゃいませ、兄上。おつとめ頑張ってきてください」


ぶんぶんと手を振る劉輝に真っ青になる


「清苑様…っ」


気づけば名を呼んでおり、清苑は見ず知らずの女官の登場に眉をひそめ、旺季は見張りをつけなかったのは失敗だった、という顔をした。しかしそれは華蓮があの日の幻影天女と気づくまでで、気づいた旺季はまるで呼吸を忘れたかのようにピタッと動きを止めた。


「華蓮っ、その、でてきてもよいのか?」

劉輝が急な俺の登場に不安げに訊く。



「おつとめに行かれるのでしょう、ですから。」


そう、呟く


「行ってらっしゃいませ、清苑様。生きてまた会いましょう」


その言葉に目を見開き、そんなことあるかと冷めた目になる清苑と、それで仕事を思いだしたというように、動き出す旺季。

離れていく二人の姿を見送る



「……感謝します」



そう、清苑が旺季に言ったのがきこえた

 

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空中三回転半宙返り土下座
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