漆黒の月の宴 幕間・Harsh Words
吏部に変化が訪れた。それは、誰もが望んでいた変化――ではなかった。


吏部に棚夏櫂兎が復帰し、彼を知る吏部の者達はこれで溜まる仕事も綺麗さっぱりなくなると一息ついた。
そして、彼が仕事に出た三日で、それまで吏部に溜まっていた仕事が消えた。彼が人並みの何倍も多く仕事したかということかというと、不思議とそんなわけでもなく、ただ仕事の采配を彼がしてみせた、それだけだった。しかし吏部はそれだけで尚書の働きなしにも機能してみせたのだった。


変化はその後、だった。


吏部尚書室に彼は呼ばれ、程経たず、きこえてきたのは彼の怒声。扉越しで言葉は判別出来なかったが、吏部の誰もがそれを聞いた。耳がよければほかの部でも聞いた者がいたかもしれない。


その後乱暴に開いた扉はそのままに、彼は早足で吏部を出た。
彼が出ていき、しんと鎮まる吏部に、尚書室の扉の奥から、いかにも不機嫌そうな声が響いた。


「棚夏櫂兎、彼の者を冗官処分とす」


吏部を出ていった彼は、そのまま二度と帰ってこなかった。










――次章に続く




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空中三回転半宙返り土下座
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