「……えー、ごほん。そのシャフツのやり方やらを他の村に向かう男らに教えてやってくれ。普通に沸騰させればよいのじゃな」
「はい」
「よし、ではわしは村人ら集める。ぶくぶく泡立つのが沸騰じゃったよな? あたためるんじゃよな?」
「はい。えっとあの、長老、料理だとか火を扱うの苦手でしたら他の人に頼んだらいいんですよ?」
「わしゃ虫を食いとうはない!」
「あ、あはは……」
そうしてそれから長老邸に村人集める指示を彼は出した。
「ちなみに食ったらどうなるんじゃ?」
素朴な疑問を投げかけられ、櫂兎の表情は固まった。
「…………多くの場合、死に至ります」
「…………そうか」
長老の表情は、一層険しくなった。
一人で回る予定だった村々に、代理で行ってくれる申し出してくれた男衆に、櫂兎は一通り説明を終える。
しかし、手伝ってくれるのは脚が自慢の数人ほどだろうと思っていたら、村の比較的若い人達こぞって協力してくれるということで。
俺自身が馬で行かなければいけない範囲の地域は、正味石榮村とその手前の村二つほどになった。
「ベコなら遅くとも三日かの」
「長老、これは馬です」
「ほっほ、そうじゃった」
出立のとき、他の男衆と共に櫂兎は残る村人達に見送られ村を発った。
「いやー、こんのべこはええな」
「うおっ?!」
小さな荷物担いだおじさんが馬に並走して声とばす。
「脚はやいですね?! あとこれ馬なんですけど、何なんですか、あの村、馬を牛呼ばわりするのが流行ってるんですか?!」
「はっは、まーにたようなもんだろうて、なっ」
「なっ、じゃありませんよ、人参とたまねぎくらいの違いですよ!」
「どっちも美味いから似たようなもんだ」
そうしてひとしきり笑った後で、そのおじさんはじゃあなと手を振って去った。
「……なんだったんだろうな、ポテト」
まったくだ、とでもいう風にポテトはふんふんと頭を揺らした。それから、行く道見据えては手綱操り一気に加速した。
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