想いは遥かなる茶都へ 24
家の者への伝言書状受け取り、地図頼りに櫂兎は凛の邸へ向かう。


「……そういや凛さんちの庭、感性いいか何かだったな、うちの邸の庭の参考にしよう」


何せ基本雑草抜くだけ、花らしい花の木は季節折々少しはあるとはいえ庭広く寂しい、空いた場所には芋畑である。
それから懐から「さいうんこくげんさく」を取り出しページを捲る。


「……何を読んどるんじゃ?というかこの文字は…」

「ちょっと覚え書きをね。この文字は俺の故郷…まぁ、瑤旋から言えば異世界の文字だよ」


この世界にも日本あるのか知らないけれど、あったとしてまだかな文字は生まれていないだろうし


「文字違うのに櫂兎は読み書きできるよのぉ。こちら来てからおぼえたのか?」

「いや、あっちのいわゆる外国語で同じような言語があって、まぁ多少違うけど何とかなる範囲だったんだよ」

「ふむ」


霄太師は肩から覗き込んではページをつついた。


「で、これには何が書かれとるんじゃ?」

「…………ええと」

「ん? 言えんような何かなのか?」


首傾げてはくりくりとした目でみつめてくる烏の姿は、やけに可愛げあってなんとも対応に困る。普段なら飛び蹴りアッパーの一つや二つかますのに。


「そういうわけじゃないけど。ただ単に忘れないようにと思って書いてるだけだよ」

「何をじゃ?」

「……昔読んだ本の内容だよ」

「ほう? 真剣に読んどるからわしはてっきり主の妹との思い出日記かと…」

「はっ、そんなの書かずとも、いつ何時の佳那の言葉一字一句違えず、表情の可愛さ脳内再生余裕、忘れなんてしない」


……あ、こいつ烏のくせに溜息つきやがった。物凄く違和感。そしてうぜぇ。


「櫂兎の妹好きも相変わらず健在のようじゃの」

「俺が妹好きでなくなる日は、昼夜逆転男女逆転しても、死んでもあり得ない」


誇らしげに言ってのけた櫂兎を、黒い瞳が見つめる。


「まだ、戻る気でおったのか」

「……当たり前、妹と会わなかった年数が俺のここ来たときの年齢越えたんだぞ、禁断症状出る前に帰らないと」

「それほどずっと、ここにおるのだぞ。はっきり言うが、それだけ時たって戻れんというのは――」

「戻れるよ、帰るよ。俺の時はここじゃ何ひとつ進んじゃいないんだから」

「……少なくとも、わしや他の仙では、戻すことは不可能だからな」


むすっとした風に、霄太師はそれだけいって口つぐんだ。

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空中三回転半宙返り土下座
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