旺季と三つ子とのお茶会で、三つ子の相手にへろへろになりながら邸へ戻れば、一人でお留守番していた様子の龍蓮が駆け寄り抱きついてくる。龍蓮の背、年の割に大きい方なのか、劉輝とさほど変わらない
「こら、龍蓮、華蓮殿から離れなさい」
「むしろそこを代わろうか」
三つ子のそんな言葉も知らんぷりで龍蓮は俺の顔をみて笑う
「おかえり、華蓮」
「ただいま、ですわ」
そういや、春色四男が今の龍蓮くらいの年頃に俺一回押し倒されたっけなぁ…
思い出し鳥肌が立つ。あれは俺のトラウマだ
ぶるりと身を震わせれば不安そうに見られるので「大丈夫ですわ」と微笑んでみせる
「そろそろ貴陽も暖かくなる頃でしょうね。旺季様とのお茶もできたことですし、近いうちに貴陽へ戻ります」
「それは残念だ。また来られたときにはきちんとおもてなしさせてください」
いや、十分もてなされたと思うんだけどな…
「帰りはうちから馬車を出しますよ、華蓮殿」
なるほど、馬車という手があったか。
「お言葉に甘えてそうさせていただきますわ」
「出立はいつになさるおつもりで?」
「そうですわね…長居しすぎたと思いますし、できるだけ早く発ちたいのですが」
馬車の準備は、ときけば明日にでもと返ってくる。今夜は荷物をまとめることになりそうだ
「手土産もなく急な訪問でしたのに、至れり尽くせりで、本当にありがとうございましたわ。貴陽にいらしてお泊りの際はご夕食など振る舞わねばなりませんね」
「それはそれは」
「楽しみです」
龍蓮が、笛を取り出し言った
「ならば我は今夜ここを発つ。また会おう、我が心の片割れ」
そうして笛を奏で始める龍蓮に、素早く耳をふさぐ三つ子
俺はとりあえずにこにこと笑いながら聴いている。
「さらばだ」
そうして龍蓮は窓から颯爽と出て行った
笛の音も遠くなったところで耳から両手を離した三つ子の誰かが訊く
「……平気なんですか、華蓮殿」
「平気も何も…別に何も…」
「「「……」」」
三つ子は目の前の女性こそ尊敬に値する人物だと確信した
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bkm