待ち望まない争いと 28
龍蓮に街を連れまわされていたせいか、行く先々で何かと一騒動起こしたせいか、藍州で俺も地味に『藍家の坊ちゃんの連れ回している謎の美姫』として認知されるようになった。美姫だなんて…喜べばいいのか苦笑いすればいいのか。


そんな龍蓮は今、俺の膝の上にちょこんと座り、何やら難しい顔をしていた。見つめているのは、摘んできた沢山の春の花々


「誠に風流かつ春春しい頭を思いついたのだが、少し自分には合わない気がするのだ。何故だろう」


「ああ、それは春色四男が似合いすぎる髪型だからだと思うな。中身も外見も春一色に花開いて頭の花に圧死しそうだし…」


いずれ絳攸の口にするであろう言葉を少し借りる。龍蓮はそれをきいて「成る程」と呟いて、また悩みだす。俺は目の前に並ぶ花々から小さな野菊だけを一つとってちょこんと頭に差した


「この前龍蓮が作曲してた『小さくほのかな春の調べ』に合わせた髪型。どうかな」


鏡を出してみせれば「おお、」と簡単の声を漏らし色々な角度から頭をみて、「うむ。」と嬉しそうに頷いた。


そして目の前にあった藍色のすみれをひょいと持つ。付け足すのかと思えば、それは俺の頭に飾られた


「我が心の片割れも、お揃いだ」


そうして微笑む龍蓮を、俺はくしゃりとなでた





夕食の席で、三つ子が口々に言う


「龍蓮ばっかり華蓮殿連れ回して、ずるいよ」


「兄に譲るってことも覚えるべきだよね」


「私たちは忙しく仕事しているっていうのに…」


ぶつぶつと溢れる不満の数々にもお構いなしで龍蓮は食事を口に運ぶ


「そうだ、明日は私たちと街へ行かないかな」


「嬉しい提案です…が、明日は旺季様とお茶をしようと思っておりますの」


そうして微笑めば、拗ねたような顔して…まぁ実際拗ねているんだろう、私も一緒にお茶するなんて言い出した。



「また今度お茶してさしあげますから」


「嫌だ」

「善はいそげっていうしね」

「明日がいいんだ」


わがまま大王は、どうやら黎深だけじゃなかったらしい。もしかして、三つ子と黎深が仲悪いのも、同族嫌悪に似たようなものなんじゃないだろうか

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空中三回転半宙返り土下座
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