「無調のはずなのに楽しげで良かったよ。俺、竜笛は吹いたこともきいたこともなかったから、すごく新鮮な感じ」
「ならば吹いてみるか?」
そうしてひょいと竜笛を渡される。そのずしりとした感覚に子供のもつ重さじゃねぇ、と苦笑いする
っていうか、間接キスになるぞ、いいのか龍蓮。
……まぁ本人きにしてなさげだしいいか
「どうやって吹けばいいか分からないんだけど…」
「感じたままを表せばいい」
そんなふうに言われても困る。まぁとりあえず、何となく音をならして指を動かしてみることにした
「うまいぞ、流石は我が風流を解する者。よし、そなたを我が心の片割れとしよう」
吹いている身としては出鱈目ったらな気もするんだが、龍蓮はとても楽しそうだったのでまぁいいかとそのまま吹き続けた。
曲というにはあまりにもお粗末な旋律も一区切りでき、笛を龍蓮に返す。
それから互いに名乗りあい、俺が現在女装中で他の人には内緒であることを話した
「なかなか女人の格好が似合っているな、美しき女仙のようだ」
「はは、ありがと。ちなみにこの姿だと裏声でさー」
そうして華蓮の声を出せば、龍蓮は驚いてみせた
「ちなみに春色四男には苦労させられておりますの」
そのまま愚痴ればふんふんと話をきいてくれる龍蓮
「愚兄その四が不埒な真似を我が心の片割れに働くなど、この藍龍蓮が断じて許さんからな!」
なんとも心強い言葉にホロリとなる。
そこにガサゴソと草むらの揺れる音がして声が降ってきた
「笛の音がしたからきてみれば、こんなところに居たのか龍蓮」
「暫く邸に滞在するように言っただろう」
「でも、まぁ、お姫様を連れてきてくれたみたいだしいいとしようか」
げ、この三重奏は
「愚兄その一二三!」
そう龍蓮が指させば、やあと三人揃って藍家スマイルで手をあげた
「兄は敬うものだよと何度も言っているだろう」
「ああ、弟が迷惑をかけませんでしたか華蓮殿」
「いいえ、とても楽しくお話させていただきましたわ。笛まできかせていただいて」
「………まさか、あの笛を間近で聞いて居たんですか?! どこかお身体の調子悪いところはありませんか!? 頭は痛くないですか?」
酷い心配のされようである。そういえば龍蓮の笛の音、別に平気だった。無調の曲とか日本の伝統芸能系の曲じゃ珍しくないし、竜笛はあまりよく分からないからそこまで下手だとか奇妙だとか思うことはなかった。
「龍蓮様、竜笛とてもお上手でしたわよ。私も少し吹かせていただきましたが、なかなか難しいものですわね」
「…………まさか、龍蓮の笛、使ったんですか?」
非常に真剣そうに言われたので、とまどいつつも「ええ」と肯定すれば
「龍蓮、華蓮殿の口付けられた笛を出しなさい」
そう言う当主三人の顔が真剣そのものなのが怖い
藍家でまともなの、龍蓮だけなのかなと思った
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bkm