進士達の配属も決まり、吏部新人達御披露目の時、絳攸と目が合った
「ようこそ、吏部へ」
にこりと笑えば照れたようにしながらも笑顔を返してくれた
絳攸は楊修が直に指導する方針で固まった。俺には新しい部下も上司もできず、何も変わりない位置でいる
華蓮の装いでふらふらと後宮を歩いていれば春色四男をみつけ、首根っこを捕まえ後宮の外に引きずり出す
「何も言わずにこの仕打ち、相変わらず僕のこと嫌いですか?おねえさん」
「後宮を乱す者は好きではないですわ」
困ったようにへらりと笑うので、俺は口を閉ざす。そして思い出して言った
「文官榜眼合格おめでとうございます」
「お祝いに、おねえさんが欲しいです」
俺は右回りをしてその場を立ち去ろうとした。慌てて四男がそれを引き留める
「おねえさんのお茶で妥協します!」
あまりにも必死に言うので仕方なく前のようにお茶することにした
「方向音痴の迷子さんとお友達にはなれましたか?」
「……ええ、まあ」
そう言って一拍置く四男
「武官を、受けようと思いました」
「ええ。貴方らしくていいと思います。軍に藍比あり、文に李紅あり、ですわ」
「……なんですか、それ」
「秘密です」
「………」
むすりとした彼にによによしながら言った
「文官としてなら李絳攸殿は非常に優秀でしょうし、貴方は文も武もできる。文に偏ってはなんですし、その選択はいいと思いますの」
「それが、先程の『軍に藍しあり、文に李絳あり』ですか? 何故僕の名がそんな中途半端にきれてるんです!? せめて一文字分しゅうとか!」
その発想はなかった。思わず茶を吹き出しそうになり、慌てて嚥下する
吹き出しなんてしたら礼儀作法に煩い薔薇姫にこっぴどく怒られてしまう気がした
「武官試験、頑張ってくださいね」
「ご褒美がないと頑張れません」
「…………頑張れないんですの?」
このヘタレが、という眼でみてやれば、うっ、と彼が息詰まる
「応援してますわ」
「頑張ったらご褒美におねえさん……」
ギロリと睨む
「…………の淹れるお茶がまた飲みたいな〜 あはは」
「ええ、労いのハーブティーを淹れますわ」
しょんぼりしている春色四男を横目に俺はいい顔で微笑んだ
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bkm