「ぐあああああ会いたいときに限って会えないとかなんなんだよあの狸いいいい!」
無人の宰相室で叫ぶ
瑤旋が動けばこんなくだらない王位争いも終わらせられるだろうに。っていうか
「何でこういうとき利用される側に女官は回るんだろうね…」
そりゃあ美人いっぱいだし、男しかいない官吏はデレデレかもしんないけど!けど!
ちょっと俺も筆頭女官の席はずしてふらふらしてられないかもしれない
「幸い王位争いに巻き込まれたくない官吏は休みもらったり辞表だしてるみたいだし、俺がここで休みとっても違和感はないよな」
もちろんそれに返事する者はいない
…独り言、つらいな
「くっ、今日も幻の甘煎餅がない」
「どうでもいいので仕事してください」
「何言うか!三日だぞ、三日! 甘煎餅の妖精が風邪かなんかひいたのか!?」
「風邪なら一週間くらいかかると思いますけど」
っていうかまだこの人は妖精の仕業と思っているのか。そんな上司に楊修はため息をつく
獏馬木殿が辞表を出したのに続くように棚夏殿もしばらくの休みを申請した。申請を蹴ろうにも気づくのが遅すぎて、いつのまにかその申請はするりと通っていた。お蔭で吏部の仕事は倍増、過労で倒れるものまで出てくる始末。ここでこの人が動かないと、吏部は本当に駄目になってしまう。
王位争い関係で、賄賂やら取り入ろうとする上官も増えた。自分に尚書への発言権があるみたいな誤解をしているらしい。この人が自分の言うこと聞くわけがなかろうに
また深いため息をついた。今日も仕事をしろと何度も言いつつ自分も書類をこなすのか。憂鬱だ。
「……え、何筆とってるんですか尚書」
「馬鹿者、仕事するんだろうが。だいたい甘煎餅の妖精がここ三日きていないのも、ここ最近の不穏な空気のせいだろう」
……この人が周りの空気を読む、だと?
もう本当に世界が崩壊へ向かっている気がした。
「仕方ない、甘煎餅がまた食べられるなら本気で仕事をしてもいいやもしれん」
その日、吏部は奇跡を見た
「………今までの仕事ぶりって…手抜き?」
楊修は、ようやくその事実に気づいたのだった
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bkm