進士、下っ端官吏 25
「貘馬木殿…こうなること最初から狙って俺のそばに楊修おいたでしょう」


「ん?さぁて、何のことやら。まー、新人ちゃんは先輩の後ろ姿をちゃんと見てるもんなんだよ。だからお前のずっと気にしてる尚書さんに楊修も目を向けたのー」


それはそうかもしれないが。
今日定時以内に仕事を終わらせた楊修は、空いた時間でひたすら、尚書に仕事をするよう説得を試みていたらしい。結局、今日は何もさせられなかったが、明日も行き、仕事するよう促すんだとか。

明日できなければ明後日、明後日無理なら明明後日。そうして黎深が折れて仕事をしない限り、楊修は説得をやめないだろう。


「どっちが折れるのが先かな」


「お互いに譲歩で落ち着くと思いますよ」


そう言えばふうん?と至極面白そうに貘馬木が笑う


「棚夏もやっぱり、楊修みてあの位置には彼がいいと思った?」


「……んー、ですね。容赦なく切り捨てられるあたりとか、人を比べるとき見ているところだとか。
適していると思わなければ、即刻指導係辞めるつもりでしたけど。
彼を知れば知るほど、貘馬木殿の思惑に賛成するを得なくなるし、ああやって尚書に仕事させようとビシバシ言える人間としてなら、彼は非常に優秀。でしょう?」



「うんうん、そして棚夏が暇あらば手伝って尚書の書類の処理してるのをいつもみていたのが彼ってね」


「みてやること無意識に覚えさせるってことですか…正式な仕事じゃないからって。俺の役割を楊修に、より吏部が機能するかたちで受け継いでもらった、ですね」




そう言うと、貘馬木は気まずそうにポリポリ頬をかいた


「本当は、棚夏にして貰いたかったんだがな」


「嫌です、そんな貧乏くじ御免です。だって尚書働く気なんてないって言ったくせ官吏として国に拾われてこの位置に置かれたんです。
だから、尚書の今の態度は何らおかしくはないし、そんな尚書を『僕お国の為に働きマス!』なんて言わせるのは無理ゲーです」


いくら毎日フラグ立つのを待ってクッキー置こうが動きないのだ。黎深お仕事させシミュレーションは難易度SSSだろう


「きっと楊修も近いうちに気づくと思います。黎深が官吏になった理由が、思いっきり私情的なこと」


「………んー」


珍しい。貘馬木が迷い困った様な顔をしている


「あー、いいや。俺、遠回しの探りが棚夏に通じるとは思ってねーし。単刀直入に訊く。紅尚書と、っていうか悪夢の国試組と棚夏の関係って…何?」


関係……?
少し考えてみるが、友人、とは相手がもう思っていないわけだし。
何だろう、邵可の弟の面倒みてる?


「彼の兄と、俺、友人で。尚書とは同期です、俺も一応悪夢の国試組ですよ」


途端に貘馬木がこの世に絶望したみたいな顔を浮かべた。

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空中三回転半宙返り土下座
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