進士、下っ端官吏 08
適当に黎深行きの書類を見繕い奪っては処理してしまう。

出来るものは粗方午前中に片付いてしまった


昼からは、後宮に顔でも出そうか

そうしてふらふら外朝を歩いていたところで、羽林軍が修練中なのがみえた



「ああ、もしかして櫂兎くん?」


「太白さん! お久しぶりです!」


声をかけられた方をみれば、懐かしい顔。
羽林軍で俺が後宮に行くまで剣の指導をしてくれていた太白さん、非常に久しぶりだ


「文官になってらしたんでしたね、遅くなりましたが状元おめでとうございます」


憶えていてくれたどころか気付いてくれていたのか


「ありがとうございます」


「そうだ、久しぶりに打ち合いませんか? 一本勝負。どうです?」


「腕、なまってると思いますけど…」


「構いません、やりましょう」



そうして剣を手渡される。久々の手のひらの重み。
深呼吸して構える



「ああ、景侖、あなた休憩中でしたら合図と判定係お願いします」


「わかりました」


そうして、始め、と合図がかけられる


その瞬間駆けて斬り込んだ


それをあっさり受けられ逆に押されるがいなす


その勢いを利用して体制を崩そうとすれば、太白さんは一歩後退して間合いをとる


そして互いに近づき剣をぶつける
こうなったら後はどちらか隙ができるかヘタるまで受けては斬りかかり斬りかかれば受けの繰り返しだ。



数十合ほど打ち合いが続いたせいか、何時の間にか打ち合っているうちにギャラリーができてしまった


「おい、あいつ文官だろう、何者だよ」


なまものですよー


「剣筋変わってんな」


自己流はいってるから仕方ないだろ
太白さんは基本重視、個人でやりやすい型あるならそれ優先で今あるものを磨いてくれる人だったのだ。
技も教えて貰ったが、「咄嗟にでてくる己の技を極めなさい、それがあなたの剣技というものです」なんて言葉をもらったので自己流と教えてもらった技を組み合わせたりで好きにさせてもらっている。


「これ、演習してるんじゃないのか!? 本当に試合?」


「太白将軍と打ち合えるとか…なかなかいねえぞ」


なぬ?! 太白……将軍だって!?
何時の間に半フリーの警護係からそんなまで上り詰めてらっしゃったんだ!?


そんなこと考えていたせいだろう、驚き意識が他にうつったのを見抜かれ、そこで押され体制を崩し尻餅をついたところで剣を向けられる。
斬りかかられれば抵抗できない。



「太白将軍の勝利、です」


しばらくの空白の後、判定がかりの声がかかる


「あ、」


……負けた。


「全く…よそごと考えてたから負けるんですよ」


「…はい」


そう言う太白さんの息は軽く乱れていた。きっと打ち合いが長引いていればこちらの勝利になっていただろう


「はあ……歳はとりたくないものですね、否応無しに体力落ちますし。
に、しても櫂兎ってば腕なまってますね、打ち合いしない日は基礎鍛錬の目録三倍こなしなさいと言っていたでしょう!」


そう笑顔でいってのける太白さんだが、確実に内心笑って居ない、叱っていらっしゃる


「ううう、最近体調崩して床に伏せったときなまっちゃったんですーっ!」


「なら10倍でも100倍でも成して下さい、教えた剣術が勿体無いでしょう!」


「すみません…」


しゅんとなればにこりと微笑む太白さん。俺はその飴と鞭の使い分けに感心する


「あ、将軍になられてたんですね、おめでとうございます」


「ええ、押し付けられました」


自由に身動きがとれないと、太白さんは文句を言った。

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空中三回転半宙返り土下座
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