結局断りの文には将来を誓った女性がいるからとかなんとかてきとーにかいてかえした
進士の研修期間も終わり、やがて部への配属が決まりだす
俺は地味に吏部を受けた。ひっそり受かったことは他の奴らに言わなかった。というか、自分がしたいことに本格的に動き出した悠舜や鳳珠、何もしないだけでも何かと影響与える黎深と、あまり一緒に動けなかったというのが正しい。飛翔も俊臣も、全く見かけない。1人与えられた仕事を取り敢えずこなす、俺はそんな下っ端毎日を続けた。
悠舜の自主左遷による茶州州尹任命を知ったのは、それからほどなくしてだった。
今、茶州の州牧、州尹になるということは、命の危険に晒されるということ。
「悠舜……頑張れな」
「ええ、櫂兎も」
微笑みを返し、茶州へ立った悠舜を見送る鳳珠、黎深、俺
「……中央には私達が居場所を作って待っていよう、悠舜が帰ってこられるように」
「…ああ」
鳳珠の言葉に黎深が頷く。俺はただ微笑んでいて、何も言わなかった
髪をバッサリ切った。元どおりになった俺。軽くなった頭が気になる
官吏一掃の時期がきているせいか、王の手でバシバシ各尚書に抜擢される悪夢の国試組の面々
俺はというと、相変わらずの毎日。階級は二つ上がったが
ちなみに黎深が吏部尚書になってから、明らかに書類の回りが悪くなった。差し入れがてらクッキー焼いて尚書室にさりげなく置いてやっては文句の一つや二つ言ってみる。…無反応
「黎深…お前もしかして俺のことわかんない?」
「は? 馴れ馴れしくするな、お前など知らん」
忘れられてましたかー そーですか。
何かいろいろ説明するのもしんどくなって何も言わずUターンする
黎深はというと、その背中を見送ったあと、置かれたクッキー……もとい、幻の甘煎餅をそっと手にとる
「…ふむ、美味い」
しかし誰が置いたのだろうと考えたところで、さっきの官吏のことさえ忘れた黎深は分からず、まあいいかとまたぐうたらしだしたのだった。
それから、気付いたら毎日幻の甘煎餅が机にあるため、黎深は幻の甘煎餅の妖精が尚書室に住み着いたのかもしれないと考えるようになった。
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