戻ってみると、黎深と飛翔が取っ組み合いの大喧嘩をしていて、すごいことになっていた。
「……おにぎり残してたはずなのに」
黎深は戻ってくるなり問答無用で飛翔に殴りかかっていったらしい。
飛翔の実家は白州・黒州のならず者たちの総元締め、両州にまたがり強大な縄張りを張る天下御免の極道一家である。白黒両家ともガチンコタメを張る伝説の大ヤクザの総領息子、ついたが【九紋龍】管飛翔。
普通に考えれば黎深が一方的にボコられる展開になるはずだが、下手に武術を習っていたがため黎深も奮闘し、互いに手加減できず、ともに鼻血したたる激しいものになったらしい
まだ殴り合いを続けようとする二人を思いっきり殴る
「ってえええええ! 何すんだ!」
「邪魔するな」
「はあ? そのまま続けたら大怪我間違いなしだろーが。骨でも折れたらどうすんだ馬鹿、けんか両成敗だっつーの」
それでも二人取っ組み合いだそうとするので飛翔は足を引っ掛け転ばせ上に乗り、黎深は腕をひねりあげ関節を固める
「飛翔、俺おにぎり残してくれるよう頼んでたやつどこにやった?」
「…あれだが」
指さす包みを悠舜が持ち上げ、ぽんと黎深の頭の上にのせる
「黎深、それ百合姫のおにぎり」
「……」
「飛翔も俺が言ってなきゃ全部食べてたかもだけど…ちゃんと残してんじゃん」
黎深の腕から手を離せば、黎深は頭の包みを両手で抱え持ち、ぼうっとそれを見た
そして立ち上がって室に行ってしまう
「あ、おい、黎深ってば」
謝りもなしか…と肩を落とす
「飛翔ごめんな」
「はっ、櫂兎のいうことじゃねえよ。…にしても、上退いてくんね? 重くはないのに動けねえってどういうことだよ」
まあ、抜け出してまた取っ組み合いになるのは困ると思ったから、ちょっと力入れて足技かけて固定してるだけなんだが
飛翔がもぞもぞと抜け出そうとしてできないことに不思議そうな顔をしてる。柔道の足技はさすがに彩雲国にはないもんなあ
そんな俺に、二人を取り押さえられるだけの腕を持っているなんて…また櫂兎が謎だとぶつぶつ悠舜が言っていたのは、もう気にしない
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bkm