試されて試されて 46
「黎深は大丈夫ですよ…あ、いや、俺の手には負えませんけど、あれでも友人ですから」


百合姫は頭を下げたまま、表情は見えない


「どうか、本当によろしくお願いします。…あんな性格ですけど、見捨てないでください。

冷たいのも、やりたい放題なのも、人の心に疎いのも、感情表現がおかしいのも、今まで人とかかわらなかっただけなんです。

常識もないから、皆さんが頭にくることも、相当あると思います。頭だけはやたらいいのでわかりにくいかと思いますが、……黎深は本当に、子供のままなんです。
……大切な人に、置いてけぼりにされたときから、一人きりの世界のままで」



「あなたが、いらっしゃるではありませんか」


悠舜のその言葉に百合姫は泣き笑いのような表情を浮かべる


「あは。私がいてもいなくても、黎深にとっては何も変わらないですよ。それじゃ」


そんなことないと否定の言葉を紡ぐまもなく、百合姫は行ってしまった。それと入れ違いに黎深と鳳珠が戻ってくる。
悠舜の持つ風呂敷から除く橙色に、黎深は眉をあげた。


「みかんか? 悠舜」


「遅いですよ、黎深。たった今まで、百合姫がいらして―――――」


その言葉に黎深の顔色が変わるのが明らかに見て取れた





百合姫を追いかけだした黎深と入れ違いで飛翔が来る。おにぎりの包みを悠舜はその飛翔に託した。そして黎深の背を追う


「これ、食っていいのか?」


俺も悠舜について行こうと助走したところで、飛翔の言葉に足を止める


「昆布、しゃけ、梅干しは2つずつ残しておいて」


「おう」


その返事を聞いてから、だいぶ遠ざかり小さくなってしまった悠舜の背を追いかけた


やっと追いついたと思えば、気を失っている劉輝が転がっており、パン、という平手の音。
悠舜が、黎深の頬を叩いていた。


「――謝りなさい、黎深」


「いやだ」


「黎深」


「百合には何を言ってもいいんだ。口出しするな」

悠舜が無言で再度手を上げる
それを百合姫が庇い立つ

二度目の平手は俺の手によって止められた。


「友人に女性の頬打たせるわけにはいかないだろ」


どうして止めるんだという目に言い返し、悠舜は百合が黎深の前に立っていたことに気づく
何故、と問うような悠舜の目に百合は苦笑して返した


「これでも一応私の主人なので、二度目まで傍観してるわけにはいかなくて」


ちょうどそのとき、なかなか戻ってこない黎深たちを追ってやってきた鳳珠も、その光景を目の当たりにした。

黎深は苛立たしげに顔をそむけると、鳳珠とすれ違うように猛然と去って行った

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空中三回転半宙返り土下座
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