12月28日
ヒンヤリと冷える夜。
外気に触れて、ほろ酔いの肌には丁度良い。空気は冷たいのに、頬を触れてみれば熱いくらいだ。
二次会に向かう者、帰路に着く者、それぞれが酒酒屋の暖簾前で挨拶を交わしていた。その者達の殆どが任務納め。年末年始は低ランク任務は殆どないし、暗殺を企てる人間も減る。この時ばかりは上忍達も少しは気を緩められるのだ。
「さて、私はだいぶん酔っちゃったし帰ろうかな」
名前は二次会の誘いを断り、挨拶もそこそこにひとり集団から離れて行く。
「ほら、名前」
「ひゃ!」
不意に首筋に当てられたのは、冷たいペットボトル。振り向けばカカシが立っていた。
「あれ?二次会は?」
「名前がいないから断って来た」
「じゃあ、2人で飲む?」
「名前は飲み過ぎでしょうが」
カカシの返答につまんないの、と唇を尖らせる。
「家まで送るよ」
「エッチ」
「……バカだねえ」
下忍の前でエロ本読んでる奴に言われたくないし、そう言い返して歩き始める。カカシもその隣に並ぶ。
「やっぱ寒いね」
「名前が温めてよ」
「やだやだ」
カカシは周りから気配が無くなったのを確認するとマスクを下ろした。
黒子を指先で掻きながら、ハァと大きく息を吐いた。名前は横目でカカシを見上げる。
「折角のイケメンなのに、顔出せば良いじゃん。モテるよ」
「俺はそう言うの要らないから」
「わ!贅沢!」
「名前だけが俺を男前だと思ってくれてたら、俺はそれで満足」
「何それ」
「んー、遠回しの告白?」
名前は立ち止まり、数拍置く。そして、また歩き出しながら口を開いた。
「飲みすぎよ、カカシ」
「名前ほどじゃないよ」
「やっぱ、飲み過ぎたかな」
聞き間違いかも、そうブツブツ言い出す名前にカカシは呆れた声を漏らした。
「俺、結構本気よ」
「はあ……」
「本気で、ここで名前にキスしたいくらいにね」
「はあ?」
カカシは名前の隣に再び並んで、ニコリと笑んだ。
「それにね、本当は抱きたい」
低く響く優しい声で囁かれたのは、大胆過ぎる言葉。
「ば!ばか!これで先生だなんて信じられない!」
頬が耳朶が赤いのはお酒のせいか、それとも……。
赤い耳朶を追い掛けながら、来年は良い年になりそうだ。カカシは、そう感じていた。
12月28日 end.
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