2月22日


俺は犬派なんだよね。

猫って、気まぐれでマイペースで、気に入らないと突然噛み付いてくるし。好き嫌いも激しいだろ?
忍猫って口寄せしても出てこないこともあると言うし。猫はそんなに好きじゃない。

でも、お前は違う。何でだろうね。





「邪魔しないでよ」

机で報告書を書く俺の膝に座ってくる。任務がたて込みすぎて、報告書が山のように溜まってるんだよ。好きなゲームでもして待ってなさいよ。
そう言っても、名前は俺にスリスリしたまま動かない。
あまりにも俺が、構わないものだから拗ねてどこかへ行ってしまった。後で機嫌直さないとな。


「何してんの?」

やっと報告書を書き終えて、名前はどこに行ったかなと違う部屋に行ってみれば、背中についたリボンがドアノブに引っ掛かって動けない名前がいた。いくらドジでもこれはないでしょ。
えへへと恥ずかしそうにしていて、これこれで可愛いけど、まぁ可哀想だしね。
呆れながらリボンを外してやる。恥ずかしいのかピューっと逃げてしまった。あーぁ。


「う……」

消えた名前が突然現れて、俺に抱き着いてきた。しかし、勢い余ってみぞおちに頭突きを食らわせて来た。
気を抜いてたせいでかなり痛い……名前はどうしたのー?と言うように可愛い顔で見上げてくる。ううん、なんでもないよ。


「名前、どきなさいよ」

そろそろ眠ろうとしたらベッドの真ん中で寝転がる名前。俺の寝る場所なんて残されていない。一応、ここは俺の家なんだから、もう少しわきまえてもらいたい。

「ま、どかすけどね」

脇腹を細かな動きで擽れば、名前はベッドの上を転がった。端に移動したのを確認して、俺は無事ベッドに入ることができた。キッ!と睨まれて、はぁと溜息をついた。

「酷いのはどっちよ、俺は疲れてるの」

名前は、むかついた!と顔をして不満そうに俺の頬を両手で挟む。そんなの気にせず目を瞑れば、名前はさらに強く挟む。名前の力じゃ痛いとも思わないけどね。

俺が相手にしないのが退屈なのか、今度は抱き着いてきてベタベタしてきた。普段は、頼んでも気分がのらないとしてくれないキスをして来る。
可愛いが、ここは我慢しろよ、ここで名前にノッたら思う壺だ。

観念したのか、俺が本当に眠ってしまったと思ったのか、名前は静かになった。
俺の腕を引っ張り勝手に抱き枕をすると、名前は俺に寄り添うように寝転んだ。二の腕に名前の温かさを感じる。なんなんだ、可愛いなぁ。
大人しくなって、チラリと目を開けて見てみれば口角を上げたまま眠っていた。名前の寝顔っていつも本当に気持ち良さそうで、見ているだけで幸せな気持ちにさせてくれる。

俺は、犬派の筈だったのになぁ。

名前は特別みたいだ。





2月22日 end.

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