5話


異変が起きたのは、名前が小さくなって2ヶ月のことだった。

相変わらず犯人は分からずにいた。

すっかり名前の事は里中に広まり、木ノ葉イチの美女は、木ノ葉イチの美少女と呼ばれていた。

いつも通り、名前と家でご飯を食べ、俺がお風呂に入っている時だった。早く名前に触れたい俺は、普段よりもサッサと済ませ、部屋着に着替えた。

突然、ガラスの割れる音がした。

俺は、脱衣所から飛び出し、音がしたリビングに戻る。

「名前!」

頭から血を流した名前が、大柄の男に捕らえられていた。

「カカシ!」

男は腕の中で暴れる名前の頭に手をかざす。名前は、目から光を失って人形のように動かなくなった。

「結界を掛けるとはな、手こずったわ」
「名前を離せ」
「無理だな」

男は、身を翻して窓から飛び出していく。俺もすぐにそれを追った。走りながら忍犬達を口寄せする。

「おい、なんだその格好は!寝間着じゃないか!」
「今は気にしてられない。名前が、あの男に攫われた。綱手様に応援を頼むのと、一緒に奴を追ってくれ」

忍犬達は、二手に分かれ、俺は残った忍犬達と男を追う。数メートルしか先にいないのに、その距離が果てしなく遠くに感じる。
これ以上離れたら、もう二度と名前に会えなくなる予感がして俺は必死だった。

男が舌打ちをして、立ち止まる。

「いつまで追い掛けて来るんだ」
「名前を取り戻すまで」
「ったく、諦めろよ」
「お前こそ諦めろ。お前の未来は死だ」

俺は、左目を開く。男は俺の目を見て少し驚いていたが、高笑いをした。

「まさか、男と住んでいると思えば。コピー忍者のカカシだったとはな!」
「なぜ名前を狙う」
「この女を欲しがる奴に頼まれただけだ。俺は金で動くもんでね」
「どいつだ?」
「言えるかよ」

刹那、お互いの拳がぶつかり合う。奴はクナイを振り上げて、俺の急所を狙ってくる。
写輪眼で避けられるとはいえ、正確な狙いに俺は息を呑んだ。武器も防具も持たない故、分が悪い。

雷切で突っ込もうとしても、名前を盾にしている。俺の雷切に当たれば、名前の体は真っ二つだ。

「早く来いよ」

挑発する男に、俺は一瞬の隙を探す。
相手だって、依頼人が名前を欲しがっているのなら、殺すわけにもいかない。なら、それを利用するしかない。
俺は、最小限だが高密度のチャクラを右手に集める。

「言っただろ、お前の未来は死だ」

バカ正直に俺は、男に真っ直ぐと突っ込んだ。咄嗟に男は名前を盾にするが、それが間違いだと気付き、名前を引っ込める。

男が怯んだ瞬間、地中に潜んでいた本当の俺は土遁で男を地中に埋め込んだ。影分身の俺は、名前の腕をしっかりと掴んで助け出す。

「てめぇ!」
「お前が間違いに気付いて目を離した瞬間に、俺は影分身に身代わりした」

俺の腕の中で、相変わらず名前は人形のように光を失っていた。体も氷のように冷たい。
忍犬に名前を託し、俺は再び雷切を右手に蓄える。

「死にたくなければ、吐け」
「笑わせるな!」
「死ぬと言うことだな」
「クク、言ってやろう。但し、お前も一緒に死ぬ!」

男は、ある一人の名前を口にした。

間髪入れず、男はチャクラを体いっぱいに練りだした。俺は、咄嗟に忍犬達に逃げろ!と命令した。
体がマグマのように真っ赤になった瞬間、男の体が爆発する。辺り一帯を包み込む程の炎が俺の視界を奪っていった。



真っ暗な闇の中に俺はいた。
何も見えない、何も聞こえない、自分の心臓の音さえ闇の中に吸い込まれていく。
ずっと長い事居た気がするし、まだこの闇には少ししか居ない気もする。

ふと聞こえた可愛い泣き声に、俺の心は締め付けられた。泣かないで、そう言うために俺は泣き声が聞こえる方に向かって走り出した。

突然の光に包まれた瞬間、俺は眩しくて目を閉じた。目が慣れた頃、そっと目を開けると、見慣れた天井が視界に入った。

「………」
「カカシ、気付いたか」

綱手様だった。
声を出したくても、喉が焼けるように痛くて声が出ない。

「喉が火傷してるから、暫く声は出すなよ」

綱手様のチャクラが体の中に入り込み、バラバラになっていた組織が繋がっていく感じがした。

「名前は無事だよ。右側見てみな」

言われるがままに、俺は顔を右に傾ける。並べられたベッドにいつもの寝顔で名前は眠っていた。ホッとして、俺の目からは涙が勝手に流れていた。

「二人共、一週間も意識を失っていた。名前は、ついさっき目覚めたけど、管だらけのお前を見てまた気を失ったよ」

本当にお前らはバカップルだな、と綱手様は笑っていた。その優しさに包まれて、俺は暖かい気持ちになった。だから、この人は火影なんだと俺は素直に思った。

「重大な火傷は、殆ど治した。入院は得意だろう。今回の入院は名前も一緒だ。文句無いな?」

そんなに名前は重症なのかと心配になる。それを察してか、綱手様は俺の額をピンとデコピンした。

「ったく、分かりやすい奴だ。名前は、元気だよ。名前がいないと、カカシくん駄々こねるだろ。暗部の護衛もつけてある。礼は高級焼酎でいいよ」

綱手様は、名前の頭を優しく撫でると、手をヒラヒラさせながら病室を出ていった。

それから

名前がずっと傍にいて看病をしてくれた。俺が何も言えなくても、名前はすぐに気付いてくれた。この空間がとても心地良くて、俺は幸せを噛み締めていた。

「カカシ、本当にありがとう」

名前は、チェーンを通してネックレスにした指輪を大切そうに撫でる。

「あんまり覚えてないんだけどね、カカシが凄く暖かったのは覚えてる」

小さな手が、俺の手を優しく撫でる。

「だからね、カカシが助けてくれたんだって、分かったから怖くなかった」

名前が居てくれて、時に泣いて、笑って、怒って、拗ねて、そんな当たり前のことが一番幸せなんだと思った。

「カカシ、本当にありがとう」

名前は、俺の唇にキスをしてはにかんだ。


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