きっと幸せ


「はぁ……」

何が悲しくて、里の見張りをやっているんだろう。名前は密かに溜息をついた。

この大晦日に仕事なんて。

見張り台から家々に灯る明かりを見て、みんな暖かいコタツでテレビでも見ながら年を越すんだろうなぁと羨ましく思った。帰ったら、熱々のお風呂に入って寝正月を決め込むのだと、心の中で熱く決意した。
幸いにも、担当区画は小さく2人で見張ればいい。場所も、少し奥まった所にあり、他の見張り台を掻い潜らなければならない場所だから、少しばかり気楽に過ごせる。

クリスマスの翌日、綱手に、名前は恋人はいるのか?と聞かれて、バカ正直にいませんと言ったばかりにこのザマだと自嘲した。年越しする相手がいないなら、任務をいれても一緒だろ!と。
えぇ、確かにどちらにせよ寂しい年越しにはなりますが、暖かい場所で年を越したかった!と名前は心の中で綱手への文句をぶつけた。

「やぁ、おまたせ」
「お疲れさまです!では、お願いします」

後ろで声がして見張りが交代したんだと分かった。さっきまでの見張りの中忍のペアは上忍の名前とは距離を置いてきたものだから、さして気にも留めない。名前は手摺に肘をつきながら、単眼鏡を覗き込み続けた。来るはずの自分の交代は来ない。少し遅れているみたいだ。

分かっていたが、年末の深夜は寒い。待機所から毛布持って来れば良かったと手袋をはめながら後悔した。普段のスカートも寒くて、ズボンにすればよかった。来年は恋人を作って、年越し任務は入れられないようにするぞ!と誓う。

「寒いの?」

体を擦っている音が聞こえたのか、新しいペアが声を掛けてきた。単眼鏡を覗き込んだまま、名前は振り返る事もなく返事をする。

「えぇ、やっぱり寒いですね」
「そうだね、じゃあ暖めてあげるよ」
「えー?火遁でも使う気ですか?」

軽い冗談を返しながら、ちょっと面倒な人来ちゃったかもと心の中で呟いた。

「なーにが、面倒な奴よ」
「え?あ、カカシ!?」

声が耳元でしたものだから、驚いて振り返ると同僚のカカシが立っていた。

「名前、全然気付いてくれないから」
「まさか、こんな簡単な任務にカカシが来るとは思わないもの」
「名前も恋人がいないから、綱手様に任務入れられたクチでしょ」
「寂しくて悪かったわね!」
「まーまー、俺も寂しいんだからお互い様。でも、名前と一緒なんてラッキー」

そう言うと、カカシは後ろから名前を着ていたコートで包み込む。
暖かいと思うと同時に、背中ぴったりに感じるカカシの温もりに、名前は咄嗟に逃げようとした。しかし、カカシががっちりと抱き締めてくる。

「だーめ」
「や、何してるの」
「あったかいでしょ?」

カカシは、名前を自分の腕の中に閉じ込めた。

「名前暖かい」
「ちょっと、見張りしなよ」
「大丈夫大丈夫」

後ろから抱き締められ、名前は溜息を吐く。
カカシからのセクハラは今に始まったことではない。待機所では膝枕して来たり、手を繋いで来たり。ハグしてくることも初めてではなく、これ以上変な事をしてこないなら、大人しくしてやるかと抵抗をやめた。カカシがくっついてくるお陰で、さっきまで寒かったのが嘘のように暖かい。
ポツポツと会話をしながら、緊張感のない見張りを続ける。

「カカシって変態だよね」
「そう?名前だけだよ、好きだからね」
「そうね、はいはい」
「あ、またそうやって流す」

好きだって何度も言われた。あまりにも軽すぎて、本気で言っているなんて思ったことはない。きっと他の女の子にも言っているんだろう。

「名前のこと、本当に好きだよ?」
「うん、知ってるよ」
「本当に?名前は俺が好き?」
「あー、好き好き」

本当に?としつこく聞いてくるカカシをあしらえば、少し拗ねたように更に強く抱き締めてきた。忍者ベストのファスナーを下げてきて、嫌な予感が名前を襲う。

「あぁ、やっぱり柔らかい。折角2人きりになれたからね」
「え!?ちょっと!だめだって!」

カカシの手のひらが、名前の柔らかい胸を包み込む。その形を確かめるように、何度もやわやわと下から掬い上げる。カカシの手を弾いて、逃げ出そうとしたが、両手を纏められ目の前の手摺に固く紐で結び付けられてしまった。この先の展開が頭を掠め、血の気が引く。

「や、やめてよ!」
「いい加減、素直になりなさいって」
「素直だもん!」
「ウソだね」

耳たぶを齧られ、輪郭を舌でなぞられる。耳の中にカカシの吐息が入り込み、脳まで直接撫でられているようだった。

「名前、好きだよ……」

ずるい、と名前は呟いた。
カカシの手は、胸の形が変わる程に激しく動き始める。片手が服の中に潜り込み、アンダーを下着と共に胸の上に捲りあげた。

「いや!」

服の上から、胸の天辺にあるツンと尖った部分を摘み上げる。
名前は思わず甘い息を漏らした。薄い忍服越しにも分かるほどぷっくりと膨らんだそこを、カカシの指がしつこく捏ねたり摘んだりする。刺激を与え続けられて、いとも簡単にジンジンと熱を帯びる。上から爪を立てられただけで、更に体の奥までもが熱くなった。少しでも気を抜けば、声が漏れ出てしまいそうになる。

太腿の間が冷たく感じた。カカシによって悪戯にもたらされた快感のせいだと名前は唇を固く結ぶ。カカシが濡れた場所に触れない事を祈りながら、早く悪戯が過ぎるのを待つ。
うなじと耳に、何度もキスを落とされ、きっと赤い跡が沢山残っているだろう。こんなに意地の悪い悪戯は初めてだ。

カカシは、名前の柔らかい太腿に触れた。男は視覚で興奮すると言うが、名前の体に触れていると言う事実だけで理性が薄れ行くのを感じていた。
冗談めかさなければ言えない程、彼女を好きになっていた。ついに我慢出来なくなった欲情を、行動に移し罪悪感に襲われる。責任とるから、そう心の中で謝罪をし制止できない想いをぶつけた。
指先ですーっと優しく触れれば、名前の肌が粟立つ。
指を少しずつ上げていき、太腿の付け根に触れた。微かに濡れた音がして、彼女がちゃんと感じていてくれてカカシは密かに笑った。下着の上からでも分かるほど濡れたそこを、指で上下に擦れば名前からクッと息が漏れ出た。小さく硬くなった尖りを見つけ出し、爪先で突っつく。

「……ぁ、ん」

ついに我慢できず、声を出してしまった。
ハッとした時には、カカシは嬉しそうに耳元にキスをしてきた。下着を下げられ、ひんやりとした空気が触れる。長い指が侵入して来て、中を掻き回した。
カカシのコートの中で、忍服も捲り上げられ露わになった胸を刺激され、下半身は蕩けるほどに掻き回される。外から見えないとはいえ、自分の恥ずかしい状態に名前は唇を噛んだ。
指がいつの間にか増え、床を汚すほど濡れてしまっていた。

「俺で気持ちよくなってよ……」

掠れた声で囁かれ、体が震えた。
名前の柔らかい入口を、カカシのものが何度か擦り、そして、ゆっくりと入り込んだ。あまりにも大きくて入らないと思った。
経験した事のない熱く大きな質量に、名前は息を忘れた。痛くはないのに、息が出来なくなるほど苦しくなる。全てを飲み込んで、体の中がカカシでいっぱいになっている感覚に陥った。

動かないで、お願い、名前は囁くように懇願する。突き動かれてしまえば、壊れてしまう。まるで自分が処女に戻ってしまったかのように思った。

動かないでと言うお願いは、カカシを高揚させた。抜いてと言われると思っていたから。少なくとも、自分は名前の中にいても良いのだと感じた。
カカシを柔らかく包み込む名前に、ごめんね、と囁いてから腰をゆっくりと動かし始めた。

粘膜が圧迫され、頭の中が真っ白になる。
自分がどうなっているかなんて、把握出来ない。甘い声をあげながら、手摺を掴むことでしか自分を保つ事が出来なくなっていた。
太腿を持ち上げられ、片足立ちの状態にさせられる。下から突き上げられれば、到達したことのないほど深い場所にまでカカシを感じた。自分でも知らない場所を、カカシが入り込む。

「カカシ……」

激しい吐息の間から、求めるように紡がれた自分の名前を聞いた。名前の両手を手摺から解放させて、コートを脱いで床に落とした。彼女の体を反転させると、コートの上に寝かせる。
中途半端に服を脱がされた姿は、この世のものと思えないほど魅力的で美しい。快楽で朱に染まった頬と潤んだ瞳、自分でつけた赤い跡が耳から肩まで散らばっていた。
カカシはクラクラと目眩を感じながら、名前の太腿を大きく開き、繰り返し突き上げる。

何度果てたか分からない。何分経ったのかさえも分からない。
胸の突起を濡れた指で弾かれ、カカシのものが粘膜を引きずり出すかの様に掻き回す。

「名前、俺を見て……」

素直に目を開けば、マスクを首まで下げたカカシがいた。初めて見るその彼は、想像よりもずっと端正な顔立ちをしていて目を奪われる。汗を流しながら眉間に深い皺を刻んでいて、彼も精一杯なのだと気付いた。

「……カカシ……お願い」

逞しい二の腕に触れれば、唐突に唇を塞がれた。突き上げる激しさとは裏腹に、唇が優しくてカカシの想いが自分の中に流れ込んで来るのが分かった。
ああ、この人は本当に自分のことを好きなのだ。
銀色の髪に両手を埋めて、キスに応えようと必死になった。カカシの熱を受け入れた下半身は、溶けてしまったかのようだった。

もう無理だと思った。あと1度でも再び絶頂を迎えてしまえば、きっと壊れてしまう。もうやめて、そう言いたくても喘ぎ声しか出てこない。
もう絶頂はすぐそこまで来ていた。お願い、来ないで、名前は必死に耐えたが我慢も虚しく壁は壊れた。
押し寄せる波が、名前を襲った瞬間に、カカシの唇から息が漏れて動きか止まった。

カカシを注ぎ込まれて、名前は自らカカシに抱き着く。カカシは嬉しそうに息を吐き出し、名前の額にキスをした。

「好き……」

耳元で精魂果てた男の息遣いを感じながら、名前は自分の想いをカカシに注ぎ込もうと必死だった。鎖骨と肩に齧り付いて、キスを落とす。カカシが自分にしたように、自分もカカシに吸い付いた。

彼を好きになってしまえば、夢中になってしまうのが怖かった。自覚してしまえば、もう遅かった。こんなに人を好きになったのは初めてだった。

キスをしながら抱き合えば、鐘の音が耳に届いた。

「あ……」
「名前、あけましておめでとう」

こんな年越しも悪くないでしょ、といつもの調子に戻ったカカシに名前は吹き出す。ケラケラと笑っていると、体がぶるりと震えた。

「さ、寒い……」
「ごめん」

脱がした服を元に戻し、再びコートで名前を包み込んだ。

「早く任務終わんないかな」
「仕事しなかったくせに……」

そーだねと、カカシは笑いながら、名前の髪を梳くように撫でる。

「終わったら、初詣行こうよ。今なら大吉引く自信ある」
「いいよ、私は大凶引く自信あるし」
「えぇ?何でよ」

ふと気配がして、名前はカカシから離れた。交代2人が姿を表す。すると、2人とも少し驚いた顔をしていた。

「あれ?名前上忍もいたんですか?」
「え?うん」
「はたけ上忍1人でいるものかと…すみません、名前上忍、見張りの延長をさせてしまって」
「いーの、いーの。楽しく過ごせたしねぇ……ね、名前?」

カカシは何か分かっているかのようだった。そういえば、名前の交代要員が来なかったことを思い出し、見張り台を出てから、カカシに問いただす。

「名前と年越しする為に、ちょっと後輩を騙しただけだよ」
「はぁ……」

ほんと、カカシってバカね。

愛情を込めてそう言えば、カカシは嬉しそうに笑った。

「あ、カカシ!」
「ん?」
「今年もよろしくね」
「うん、よろしく」

立ち止まり、挨拶を交わせば自然とキスをした。
今年の年末は、任務を入れられそうにはないな…名前は少し安心しながら口を開く。

「ねぇ、寒いからカカシの家で過ごしたいな。初詣は明日にしよう」
「いーけど、寝かせてあげないよ?あんなんじゃ足りない」
「もう……ばか……」

名前の手を握りながら、カカシは家に続く道を進む。
緩みっぱなしの頬を見られないように、早歩きで家に急いだ。





きっと幸せ end.

prev next

[back]


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -