人形姫・10


今日は、初めての忍者学校出勤日。
三代目に言われた通り、正門で待っていた。すると、校舎のほうからカカシの格好に良く似た男の人が走って来た。あの人も忍者なんだと、額当てを見て分かった。

「こんにちは。あなたが、名前さん?」
「あ、はい!」
「はじめまして。俺はうみのイルカです。あなたがアカデミーに慣れるまで、色々サポートさせて頂きます」
「はじめまして!苗字名前です!宜しくお願いします!」

名前はイルカの笑顔を見て、優しそうな人がいて良かったと思った。忍でも、こんな裏の無さそうな人が居るんだと驚いた。カカシだって優しいが、カカシの一挙手一投足には全て裏がある、何か理由がある気がしてしまうのだ。

「では、早速ですが学校内を案内しますね。今は授業中なので生徒は教室です」
「はい!」

カカシから話は聞いていたが、忍者を育てる学校なんてマンガやアニメの世界だけだと思っていた。教室にいる生徒達もカカシみたいになるのだろうか。

「名前さんは、一般の方という事なので基本的には事務作業や生徒のサポートをして貰います。名前さんは美人だから、すぐ生徒にも人気でそうですね!」

ハハハッと笑うイルカ。お上手ですね、と名前も笑う。

「あー!イルカ先生!サボってるてばよ!」
「ナルト!サボりはどっちだ!今は授業中だぞ!」
「へへっ」

人懐っこい笑顔の少年に、名前も笑みが溢れる。

「ん?このキレーな姉ちゃん誰だ?」
「名前さんだ。ナルト達のサポートをしてくれる新しい職員さんだぞ」
「へー」
「ナルトくん、はじめまして。よろしくね」
「俺は、うずまきナルト!将来、火影になる男だってばよ!」

火影になる男がサボってどうすると突っ込むイルカ。名前は、その真っ直ぐな瞳に吸い込まれそうだった。

「ナルトくん、絶対、火影になれるよ」
「………おう!当たり前だってばよ!」
「まぁ、まずは勉強しなきゃね」

名前がニシシと笑うと、ナルトはやべっと言いながら教室に戻っていった。

「ナルトの奴がすいません。ざっと案内も終わりましたし、名前さんの机もご案内しますね」

職員室の一角にある名前の机。窓からグラウンドが良く見える。子供達の可愛い笑顔や真剣な顔が見えて、いい席だなぁと思った。窓からグラウンドを見れば、懐かしい土の香りがした。

「早速で申し訳ないんですが、人手不足なもので少しお仕事をして頂こうと思ってます」
「もちろんです!」

イルカから渡された書類を整理する。舞妓の仕事しかしたことのない名前は、慣れない仕事に悪戦苦闘していた。
中学卒業と同時に花街の世界に入り、一般的な社会人経験もない。普通の社会人とは全然違う経験をしてきた名前にとって、事務作業はとても新鮮だった。それと同時に世間の人は、こんな大変な仕事してるなんて凄いなと思った。
ふと気付くと、職員室の入り口が賑やかなことに気付いた。名前が入り口の方を見ると、生徒達がワーッと手を振ってきた。名前も笑顔で振り返す。

「かわいいー!新しい先生?」
「こら、お仕事の邪魔しちゃダメだぞ」
「えー、ミズキ先生。ずりー」

ミズキと言う先生に文句を言いながらも、生徒たちは大人しく教室に戻って行った。

「すいません。新しい職員の方が来るのは珍しくて」
「いいえ。みんな、とっても可愛いですね。あんなに可愛い子達がみんな忍者になるんだと思うと、なんか凄いなって思います」

ミズキはそうですか?と返答した。
確かに、この世界では忍者が当たり前なんだから、変な事言ってしまったなと思った。



定時より少し早く上がった名前は、そのまま食材を買いに行くことにした。今までとは全然違う仕事だけど、働く事は気持ちいい。
舞妓は接客の仕事だから、事務作業はなかなか堪えた。ちょっとしかしていないのに、肩と腰が既に痛い。

「名前」
「あ、カカシさん!」
「アカデミーどうだった?」
「凄いですね!子供なのにみんな運動神経すごいし。可愛い子達ばかりでした。もう私、噂になってるみたいですよ?」
「だろうねぇ」

だって、名前は飛び抜けて可愛いんだもの。カカシは言葉を飲み込んだ。

「名前、今夜は外に食べに行こうか」
「いや、まだお給料貰えてないですし」
「いーの、可愛い女の子に奢らないでは男が廃るでしょ?」
「そんな…」
「名前のお仕事が上手く行くようにってね。」
「……では、お言葉に甘えて」

連れて行ってくれたのは、屏風で仕切られた半個室の居酒屋。なんか忍者って感じがして名前はテンションがあがる。

「ご飯美味しいから。お酒飲めなくても大丈夫だよ」

カカシのオススメを注文し、名前はジュース、カカシはお酒で乾杯した。カカシの言う通り、料理はとても絶品で舌鼓を打つ。

「はぁー、美味しいって幸せですね。それに」
「それに?」
「隣にカカシさんがいるから」

満面の笑みの名前を見て、カカシは時が止まるのを感じた。摘んだ唐揚げをポロリと零すカカシを見て、名前はフフフっと笑った。

「カカシさん、飲み過ぎですよ」


ー11ー

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