短編に満たないものとか会話文とか
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こくはく
:シャルル
物語の最後だからって登場人物の人生が最後、なんてことはないはずだ。めでたしめでたしのその後にだって人生は続いていく。その人が死ぬまで最後じゃない。 「つまり、この戦いが終わったとしても、死ぬわけじゃない」 「それはそうだろうけど、急にどうしたの」 「シャルルが好きだなあって話」 「は、え、え?」 珍しく動揺を隠せていない彼に笑ってしまう。もし、この戦いが終わった時に死ななければならないようなことがあれば、その時に最期に映すのは彼の姿がいい。
2021/05/01
優しく微笑む貴方に春が来ますように
:シャルル
はあ、と息を吐いて上を向く。空は少し暗く、雲は重そうだった。 「雪、降るかなあ」 いつの間にか隣に来ていたマスターも上を向いていた。鼻が少しだけ赤くてかわいいなと思ったと同時に、やっぱり寒いんだなと思った。 「ちゃんとあったかくしなきゃだめだよ」 「シャルルもね」 小さく笑って俺を見上げる。寒さで傷のある手が痛んだりしないのだろうか。この人は自分のことに対して無頓着だから、誰かが気にしておかないとすぐ手が冷たくなる。かじかんでいる手は痛いはずなのに。 「マスター、今日は外に出る用事なかったよね」 「そうだね」 「じゃあココア淹れてくるよ」 「本当? ありがとう」
(白い息/朝の冷えた空気/冷たい手のひら)
2021/04/10
英国軍用銃と倫理がバグっているか否かの話をする
:エンフィールド
「そんなことありませんよ!?」 「はあ? お前ハロウィンのあれ忘れたのかよ。なに妙な館にあるミートパイふっつーに食ってんだよ。そんなやつにまともな倫理があるかっつーの」 「あれはマスターも止めなかったじゃないですか……」 「あ?」 「いえ、なんでもありせん。……でも、それとこれとは少し話が違うような気もします」 「ええ? じゃあ、あれ。もし俺が死体をこしらえたらどうする?」 「急に話が飛びすぎでは!?」 「ありえない話ではないだろー。腐っても戦場だし」 「はあ……、そう、そうですね……」 納得はしていない様子だったけれど、一応考えてはくれるらしい。真面目だな。口元に手を当て、ふむと考え込む。顔はいいんだけどなあ、こいつ。如何せん中身が全然違う。外見詐欺ではないだろうか。いやそれを言い出したらシャスポーあたりもそうなりかねないんだけど。 「……とりあえず、埋めましょうか?」 「ほらお前どう考えても倫理バグってんだろ!? なに明日の天気聞くノリで死体遺棄を提案してんの!? 埋めるの手伝ってくれんの!?」 「マスターが望むなら」 「うわ……まじかよお前……もしもの時はよろしくな……」 「そんなもしもの時、経験したくはないですね……」
:スナイダー
「そもそも、俺にそういったことを求めるほうが間違っているだろう」 「うわあ辛辣ー、でも納得してしまう」 ふん、とくだらなさそうに遠くを向いた。彼の瞳に映るのは戦場での景色だけ。そこに倫理などありはしない。ここは戦場だ。まともな倫理をもっていて生きていけるかっつーの。 「えー、じゃあ俺が昔死体を埋めたことあるって言ったらどうするよ」 「それが何か問題でもあるのか?」 「大ありなんだよなあ」 死体遺棄は立派な犯罪です。まあしたことないしする予定も、多分ない。無機物であった彼の前にそんなことは些細なことなのだろうけれど。 「おまえがそこにいて俺を直す。それができればおまえが過去に何をしていようが俺には関係ない」 「は、はは。お前、やっぱそういうとこかなわないな」 銃に人間がかなうかよ。思い上がるな。
:ベス
「先輩だけが頼りな感じがひしひしとするんだけどどうでしょう先輩」 「おまえ、いつ俺の後輩になったんだよ」 「その場のノリですよ、突っ込むな」 「そうか」 紅茶を淹れる合間の他愛ない会話。それに付き合ってくれるということが本当に嬉しいことをきっと君は気づいている。察しは、多分いいほうだよな。 「ベスは俺が死体をこしらえたらどうするよ」 「……それ、今する話か?」 「だよなー!」 眉を顰めるのがこの世界で生きやすいのかどうかはともかく。ひととしては正しい反応だよ、ブラウン・ベス。大英帝国を築いた銃。君は人と共にあった銃だ。
2019/05/16
情緒が安定したときがあったと思う?
:ケンタッキー、スプリングフィールド
「暴力……きらきらの暴力ですよこれは……」 「マ、マスター、どうしたんすか急に」 「急にじゃないよもう! ちょっと! 自覚ないでしょ!!」 「マスター! ケンちゃん! 見て! シャルル兄ちゃんがお菓子くれた!!」 「うわ、量がえげつねえ……」 「あれ絶対太るからスプリングにあげたんだろうな……」 「一緒に食べよー!」 「太陽……眩しい……食べる……」 「マスター、情緒不安定すぎません?」
2019/05/16
祈りに似たそれを君は知らなくていい
:ケンタッキー
きらきらした目と声が印象的だった。こちらに向けられるそれと、他のひとたちに向けられるそれが違うものだとは気づいていたけれど、そういうのはいっそ潔くて嫌いじゃない。なんて、言ったことはないんだけど。言ったところで首を傾げられるだけかもしれないし。 「あっ、マスター!」 人懐っこい笑顔、きらきらしている、どうか君はそのままでそこにいて。
2019/05/16
楽しい話がしたいんだ!
:スプリングフィールド
夢の話をしたとき、曖昧に笑ってごまかされた。そのことが気にならないと言えば嘘になるけど、無理やり聞き出すようなことはしたくなかった。 「俺はね、マスター。君のことも、君の夢も、全部を守りたいって思ってるんだ」 きっと、あなたが幸せな夢を願うことのできる世界になったら。その時は、また夢の話をさせてね。
2019/05/16
ハッピーバレンタイン!
(エカチェリーナ)
耳に届く音が不快で仕方ない。銃声と人の声。混ざりあってよく聞こえない。けれども隣にいる彼の声だけは上手く拾えていた。 「こんなときにまでお仕事ですか」 「付き合わせて本当にごめん」 「いいえ、きにしないでください。さっさとおわらせましょー?」 ふ、と目を細める女帝が最高にかっこよくて一瞬見蕩れてしまった、のを気づかない彼ではない。 「かえったら、あまいおかしをいっしょに食べましょうね、ますたー」
(マルガリータ)
「ねえねえマスター、マスターは誰かに渡したりしないの?」 数日前から聞かれる言葉の意味がわからないほど日付感覚が死んではいない。キラキラの瞳に射抜かれたままで君にお菓子を渡すような自殺行為はしたくない。したくない、んだけど、渡さないという選択肢を選びたくもない。エゴの固まりみたいなお菓子。自分で食べるには少し、甘すぎる。 「マルガリータ」 「なあに?」 「これ、どうぞ」 「え、」 ぽかんと口を開けて動かなくなった。と思えばすぐに嬉しそうに渡したそれを見つめる。 「いいの!? マジ!?」 うわー! ありがとうマスター! めっっちゃ嬉しい! とか、そういうことをまっすぐに言ってくるんだから。簡単に死んじゃうでしょ。ほんと。
(シャルル)
「自分が渡されるとは思ってなかったりするの?」 「え、えと、マスター、これ、」 フランスではバラを送るらしいけれど、ここで手に入ってなおかつシャルルに渡したかったものはやっぱりスイーツだった。 「受け取ってもらえるよね」 「押しが強い……」 「だって、まさか渡せるといいねなんて他人事みたいなこと言われるとは思わなくて」 「俺だってマスターから貰えるとは思ってな、あ、今のなし」 「だめです」 やっぱり思ってなかったんじゃないか。こっちはこれを渡すだけなのに眠れなかったし今だって心臓がうるさいしでいっぱいいっぱいなんだよ。それだけ、シャルルのことが大切なんだよ。 「次、あんなこと言ったら泣くから」 「そ、れは……やだ、な……」
(カトラリー)
渡したときにあんなに驚かれるとは思わなかった。嬉しそうに笑ってくれたあの顔を忘れることはないだろう。 「あ、マスター」 食堂にはコップを持った彼がいた。彼が食堂に出入りしているという事実が嬉しい。ほっこりとしながら近づけば甘い匂いがしてきて首を傾げた。 「ホットチョコ作ったんだけど、その、マスターもよかったら飲む?」 「いいの?」 「うん」 「じゃあいただきます」 少しだけほっとしたような表情でコップを用意してくれる。もしかしてお返しなんだろうか。でもお返しの日にって言ってたし違うのかな。 「お返し、じゃないんだけど。美味しいからマスターにも飲んでほしくて」 ぽつ、と呟かれた言葉にどう返すべきか思っているとコップを渡される。 「お返しはちゃんと考えておくから。覚悟して」
2019/02/14
できあがったのものは責任をもって(マスターが)完食しました
:カトラリー
料理を教えてくれ、と言ったのはマスターだった。ここには僕以外にも料理を作れるのはたくさんいる。なんでわざわざ僕に聞いてるのか、それだけが疑問だったけど、あまりにも何回も言われたので僕が折れた。のは、まあ、いい、んだけど。 「不器用を通り越してる、って顔してる」 「し、してない、よ」 「嘘つかなくたってわかるんだよ。どうせタバティエールにもシャルルにも似たような反応されたよ悪かったな!!」 「ああ、あの二人にもすでに習った後だったんだ……」
2019/02/04
煙が燻る中にいるきみを見たい
「う、わ」 「あー、悪い、ちょっと換気するわ」 「最初っからしろ、よ、これ俺が肺病とかだったら真っ先に死ぬやつじゃん」 「今じゃあ治る病気なんだろ?」 「拗らせたら終わりだかんな」 「そりゃ失礼しました」 「まあ別に俺みたいなバカは風邪ひかねえからどうだっていいけどな」 「それ言っちゃあおしまいだろ」 「タバティエール」 「うん?」 「別に止めろとは言わないけど気をつけとけよ」 「……あっなに、俺の話してたの?」
2019/02/04
きみとどこまでも、なんて望みを口にするかどうかはともかくとして、正直きみの笑った顔はずっと見ていたい
「スプリングフィールド」 「なに?」 「の、なにかを食べてる顔が好きなんですよ」 「ええ、なにそれ、喜んでいいの?」 「めっちゃ褒めてる」 「そっかあ、じゃあ喜んでおくね!」
2019/02/04
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