尻軽男は愛されたい


 相馬×大地でフィストファック※

「木江ってさあ、大分ケツの穴弛くなってきたよなー」

 机の上に仰向けになって乗る人の太股を掴み、開脚させるような体勢のまま体内に自らの性器を挿入してくる相馬はそうピストンしながら何気ない調子でサラリと口にした。
 毎度毎度デリカシーがないやつだとは思っていたが現在進行形でその弛いケツの穴に突っ込んでおいて何様だこいつは。一度一発ぶん殴ってやりたい。

「っお前が、毎日突っ込むからだろーがぁ……ッ」
「ははっ、確かにそーかもな。んじゃ俺のせいか」

 イラついて言い返すが、相馬はあっさりと認める。
 ここまで素直に受け入れられると責めるに責めにくい。

「なら、責任取って嫁に貰ってやろうか」

 勃起してガチガチに張ったそれで内壁を乱暴に擦られぞくりと背筋に小さな電撃が走る。
 先走りが潤滑剤になり、相馬の性器に押し広げられた肉壁は濡れた。
 膨張した性器で何度も何度も摩擦される度にそれよりも強い刺激が欲しくなり、自然と相手の動きに合わせて自分の腰が動く。
 たちの悪い冗談だと分かっているからこそ、このタイミングでそんなことを言い出す相馬が憎たらしくて仕方がない。
 愛しそうに太ももの裏を撫でられ、体内のとはまた別のこそばゆい感覚に反応してしまう。

「はっ、わるいけど、も、嫁ぎ先決まってるから……っ」

 冗談に冗談で返そうとするが口を開き言葉を紡ごうとする度に突かれ、その度に全身が緊張して喉が震え変に声が上擦ってしまう。
 息を吐き出すようにして言い返せば、相馬は「じゃあ使いもんにならないようにしてやらないとな」と可笑しそうに笑う。冗談にしては笑えない。
 乱暴に足を掴み直され、ガツガツと突かれる度に掴む指先が皮膚に食い込む。乱暴なピストンと呼吸のタイミングが合わず、息がままならない。
 喉の呼吸器官が圧迫され、その度に括約筋に力が込もり無意識に体内の異物を吐き出そうと相馬のを締めてしまう。しかし、どうやら逆効果だったようだ。
 そんな俺を面白がった相馬は止めるどころか悪化するばかりで、乱暴に奥を突かれる度に肌と肌がぶつかる音と混ざって体内から濡れた水音が聞こえてくる。

「ぁっ、やッも、無理、むりッ」
「なにが無理なんだよ。ちゃんと口で言わねえとわかんねえだろ」

 太股を掴まれ、逃げないよう固定されたそこに何度も挿入を繰り返される度に勃起した自分の性器が揺れ腹部に当たった。
 相馬の笑う声が結合部から腹の中まで響き、心地のよい声が体内に浸透していく。ぐちゅぐちゅと音を立て泡立つ体内。胸の熱は全身に広がり、じんわりと額に汗が滲んだ。
 下腹部からくる圧迫感や異物感、その他諸々のそれが腹ん中でぐちゃぐちゃに混ざり合って、締めれば硬度を増すそれに乱暴に突かれる度にまともに思考が働かなくなり、喘ぎ声とともに意味のない言葉が口から吐き出される。

「はッあ、息、苦し……ッもっと、ゆっくりぃ……っ」

 あまりの息苦しさに頭に血が上り「死んじゃう」と喘ぐ俺に、「じゃあ死ねよ」と相馬は笑う。
 結構酷いこと言われたのだが、軽い酸欠に陥った脳は相馬の言葉を言葉だと認識出来ず、俺はただひたすら空気を取り入れようと呼吸を繰り返す。
 しかし相馬の挿入に邪魔され、突かれる度に途切れる自分の呼吸はまるで息を巻いた犬のようだと思った。
 そしてぐりっと根本まで深くまで挿入された瞬間、腰から太股にかけての筋肉が痙攣を起こす。
 別の生き物のようにビクビクと跳ねる下腹部に、相馬は深く性器を捩じ込んだまま動きを止めた。次の瞬間体の中に埋まった熱い性器は大きく脈を打つ。

「ひ……うぁ……ッ」

 体内に放出される熱を持った大量の液体に全身が強張り、無意識に息を飲んだ。
 ドクドクと溢れ返る精液が腹の中で混ざり、その独特の感触にぶるぶると全身が震える。
 長い射精を終え、小さく息を吐いた相馬は俺の中から萎えた性器を抜いた。擦り続けられ腫れた内壁はそれだけの刺激でも反応してしまう。

「あははっ、すっげー出た」

 体内に溢れ返った精液を塞ぐものがなくなり、どろりと窪みをなぞるように溢れるそれを見て相馬は笑った。
 だろうな。
 まだ腹の中に残ってるそれの感触を感じながら、事後独特の余韻に浸る俺は何度か深呼吸を繰り返し新鮮な空気を肺に取り入れる。
 相馬は俺の太股から手を離し、ご丁寧に寝かしてくれた。しかし、いつまでも机の上でだらだらしてるのは体勢的に辛い。

「ん……ッ」

 ゆっくりと上半身を起こせば、無意識に締まったそこから中の精液が溢れるのがわかった。そのぬるりとした粘着質な感触に小さな呻き声を漏れる。そんな人の下半身を覗き込む相馬は「おお」と驚いたような声を上げた。

「結構出るな」
「……そりゃ、あんだけ出されればな」
「おもしれー」

 バカにされてる気がしてならないのは俺の感受性の問題なのだろうか。
 言いながら、机の上に座る俺の下に溜まった精液を指で掬う相馬はそのまま俺の太股を掴み、再び腰を持ち上げさせてくる。

「おいっ、またかよ」
「や、せっかくだから木江の体を労ってやろうかと」
「は?」

 晒した肛門に精液を塗り込むように二本の指を捩じ込んでくる相馬にビクリと腰が揺れた。
 労るってなんだ。未だハッキリと働かない頭で相馬がなにをしようとしているのかまるで理解出来ず、だからといって異様な気だるさに襲われた体は抵抗する気力も残ってはいない。
 面倒になった俺はテーブルに両手をつき、体内に埋め込まれる相馬の指を見詰める。
 肛門に挿入しているところまでしっかり見えるわけではなかったが、ずぷずぷと精液で溢れたそこへと消えていく相馬の指を見ていると体内に入り込んでくるこの感触が相馬のだと実感し、自然と息が上がった。
 そして、すぐに相馬の言っていた意味がわかる。

「ふ、ぅ……んん……ッ」

 精液で濡れたそこにぬるりと簡単に滑り込んでくる二本の指はくの字に曲がり、中に残った精液を探るように掻き出された。
 相馬が指を動かす度にぐちゅりと生々しい音が立ち、軽く内壁を刺激されゾクゾクと背筋に甘い刺激が走る。

「木江、見える?ぱっくり開いてて中身丸見え」
「……っいちいち言うなって、バカ」
「言った方が燃えんだろ、こーいうの」

 お前の性癖なんてどっちでもいいんだよ。せせら笑う相馬は、軽く足をばたつかせる俺を無視して三本目の指をぬるりと滑り込ませてきた。
 体内に埋め込まれた三本の指に内壁を撫でるように精液を掻き出され、刺激される度に肛門全体が中の指をきゅっと締め付けてしまう。

「こんくらいでいちいち感じんなよ」
「……んなこと言われても、無理だって……ッ」
「気合いで頑張れ」

 そんな無茶な。安易に付け根まで指を挿入させてくる相馬は「んん?」と悩ましげに唸る。
 先程まで順調に精液を外へ掻き出していた相馬の手が止まり、なんとなく不安を覚えた俺は「なんだよ」と声をかけた。

「いや、もっと奥まで入ってるっぽい」
「いいって、じゃあ。そんくらいで」
「遠慮すんなよ」
「遠慮じゃねえって……んんッ」

 言いかけて、指先でぐりぐりと内壁を弄られ爪先までに掛けて心地良い刺激が走った。

「ッ、おい……っ」

 まるで話を逸らすような愛撫に眉を潜めた俺は、喘ぎそうになるのを必死に堪えながら相馬を睨み付ける。
 すると、そんな俺を他所に相馬は「あっ」となにか思い付いたように声を上げた。
 拍子に強く内壁を押され、再び込み上げてくる体の熱に全身がぞくりと震える。

「ちょッ、あ?なに……っ」
「や、指で無理だった腕も入れちゃえばいいかなって思いまして」

 は?
 問答無用で四本目を追加する相馬の言葉に目を丸くした俺はあんぐりと口を開いた。
 いや、まじで言っている意味がわからない。というかわかりたくない。

「ちょっタンマタンマタンマタンマ!なにっ、なに考えてんのお前っ!」

 先程まで逆上せきっていた頭も流石に今の言葉で冷えきってしまう。
 目を覚ましたように声を上げ、真っ青になって相馬の腕を引き抜こうとする俺に「なんだよ、ビックリするだろ」と相馬は笑った。それはこっちの台詞だ。

「なにって、中に残ったやつ出してやろうと思って」

 言いながらも、四本の指で覆うように五本目の親指を挿入してくる相馬に「やめろって」と俺は足をばたつかせた。
 フィストファック。
 前、先輩から借りた裏モノのAVで見た悲惨なプレイ映像が脳裏を過る。痛がる女優の悲痛な声だけが頭に残り、そんな痛そうなものをたった今目の前のこいつが俺にしようとしているというだけで冷や汗ものだ。
 とか言っている間にも五本の指が根本まで挿し込まれる。

「待……ッおいっ相馬……っ!」
「あんま暴れんなよ。中傷付けちゃっても知らねーぞ」

 にゅるりと入り込んでくるその硬く大きな異物感。じんわりと背中に冷や汗が滲んだのは恐らく他に理由があるはずだ。
 あくまでもいつもと変わらない軽薄な調子で続ける相馬の言葉にてっぺんから血の気が引いていく。

「お前弛いから大丈夫だって。そんな怖がんなよ」

 これは慰められているのだろうか。それとも喧嘩を売られているのか。
 そう優しく宥めるように声を掛けてくる相馬は脅しで大人しくなる俺を一瞥し、ずぷりと音を立てながらゆっくりと拳を埋める。
 自分の股ぐらに消えていく相馬の拳を直視出来なくて、俺は目を逸らした。
 どうやら思っている以上に俺は緊張しているようだ。自然と呼吸が乱れる。

「ッは、んん……っ」
「お、木江ん中あったけー」
「あぁ……っくそ……ッ」

 残っている精液の助けもあってか、順調に中へと入り込んでくる拳に全身圧迫感で押し潰されそうになる。しかし、スムーズにいっていたが途中で相馬の動きが鈍った。
 一番大きさがある拳の関節部だ。そこが入り口で引っ掛かり、上手く飲み込めないようだ。
 逆にそこさえ入ればもう後は楽なはずなのだが、俺からしてみればそういう問題ではない。

「おい、無理すんなよ……っ」
「大丈夫大丈夫、痛いのちょっとだけだから」
「は……っ?」

 そう相馬の言葉に目を丸くしたのと下半身の違和感に気付いたのはほぼ同時だった。
 挿入後で拡がっていた肛門を更に無理矢理拡張するように捩じ込まれるその拳の異物感に全身が強張り、俺は目を剥く。

「あ、あ゙、やッ、待っやばいやばいやばいって!や、まじ、なんか中ゴリゴリいって……ひ、ぁ……ッ」

 痛みという大きな痛みはないものの、下腹部から聞こえるみちみちとどっかが切れるような音に背筋が寒くなった。
 俺の意思関係無く内壁を押し広げるようにぐぐっと入り込んでくる拳に不安と恐怖で心が押し潰されそうになる。ゆっくりと進んでくるだけましのようだ。痛い痛くない云々よりも自分の中に拳を捩じ込まれているという事実に戦慄する。

「後もうちょいだから、そんなぶっ細工な顔すんなよ」

 相変わらず何気なく酷いことを言う相馬に付き合ってられる余裕はない。
 喘ぐように呼吸を繰り返す自分の視線はフラフラと宙をさ迷い、ぐぷぐぷと体内に飲み込まれていく拳をただただ受け入れることだけを考えた。そして、焦れた相馬によって無理矢理入り口を拡げるようにしと関節の部分を捩じ込まれる。

「……ほら、入った」

 ぬちゅりと生々しい音を立て、ようやくそれは全て体内に入ったようだ。
 そう熱っぽく囁く相馬は俺に見せ付けるように腰を曲げさせ、確かに手首まで飲み込んでいる結合部が視界に入った。
 いちいち見せんなと怒鳴りたいところだったが、今はただあまり痛くなかったことだけに安堵を漏らす。

「な、どんな感じ?腕が入ってるのって」

 言いながら、相馬はそのままスムーズに腕を奥まで進めてくる。
 どこまで入ってくるんだと不安になるくらい侵入してくるそれに、いつしか全身脂汗が滲んだ。指の凹凸が内壁全体を擦り上げ、ピクリと体が跳ねる。

「すっげ……気持ち悪い……」
「まじ?そりゃどんまいだな」

 呻き声混じりに譫言のように呟く俺に相馬は笑う。
 正直、気持ち良いのか悪いのか判断が付かなかった。いつも受け入れている性器とは違う異物の感触に、このまま相馬が手を乱暴に動かすだけで腹の中がズタズタになると思えば生きた心地をまるで感じない。

「死にそうな顔してる」
「……ッ」
「木江がここまで落ち込むのもよっぽどだな」

 微かに息を漏らす俺に対し、相馬は感心したようにそんなことを言い出した。
 どういう意味だと相手を睨むが、相馬は笑うだけだった。そして相馬の腕の半分まで入ったとき、腹の中の相馬の拳がゆっくりと開かれる。

「く……ッう、ぁ……っ」
「木江、いいこと教えてやるよ」

 狭い内壁が五本の指で無理矢理拡げられ、言葉に言い表せないような感覚が全身に走る。
 文字通り、腹の中を探られるような気分だ。込み上げてくる圧迫感に目を剥いたとき、相馬は再び指を折り拳を作った。
 腹の中で動く腕の感触に息が詰まる。

「お前のこと弛いとか言ったけど、あれ嘘」

「本当はちゃんと締まってるから安心しろよ」そうにやにや笑う相馬の言葉になんで今そんなことを言い出すのかまるでわからなくて俺は目を白黒させた。そして、再び開いた拳は内壁にこびりついた精液を指でなぞる。
 腹の中をまさぐられるという慣れない感触にぞくりと背筋を震わせた俺は、恐る恐る相馬を見上げた。そのまま、腹の中の腕は内壁をなぞるように指を這わせたままゆっくりと抜かれる。

「や、ッぁ、んんっ……っ」
「まあ、でももう遅いか」

 内壁を押し広げるような形のまま勢いよく抜かれる腕は入り口で引っ掛かりかけるがそれを強引に突破しじゅぽっと嫌な音を立て、そしてようやく体内の異物感がなくなる。
 体内を圧迫するものがなくなりただそのことに安堵する俺を他所に、相馬は自分の手に絡む精液を指で伸ばした。

「腕一本入ってんだし、括約筋何本か切れてたりして」

 そして、俺の太股にそれを塗り込み相馬は優しく微笑んだ。
 ……つまり、どういうことだろうか。
 大きなものを受け入れ、見事ぱっくりと開いてしまった肛門から残った精液が溢れ机を汚す。それを気に止めるはずがなく、俺は少しだけ考え、その意味に気が付いたときには全身に冷や汗が滲んだ。

「まあ、使い物にならなくなったら俺が貰ってやるから安心しろよ」

「なあ、嬉しいだろ」そう尋ねてくる相馬に、俺は『ああ、なるほど』と俺は一人納得した。
 つまり俺はまんまと食わされたというわけか。開きっぱなしになった肛門からどくどくと精液が溢れ出し机を汚すのをただ俺は眺めていた。
 もう少しまともなプロポーズはなかったのだろうか。

 おしまい


 home 
bookmark