「ま、負けちゃったんですか…?!」
「うん。ごめんね。」

ユイはカプリの目の前まで来て申し訳無さそうに笑顔を作る。カプリはそこで少し驚き、「あ、」と声を漏らす。バトルの後に挨拶した時には気付かなかったが、彼女はカプリよりも頭半分程小さかった。自分があの時如何に大きなショックを受けていたのかを目の当たりにし、カプリは更に落ち込んでしまった。

「い、いえ…ユイさん程のレベルのトレーナーでも負けちゃうんですね…」
「うん。でも僕はもう目標達成したからいいんだ」
「目標…なるほど…私もなんとなく参戦ではなく、なにか目標を持って挑めば良かったです…」
「はは、初めてのリーグじゃ仕方ないよ。」

二人はモニターに映し出される予選の様子を眺めながらポツポツと会話をする。どんな旅をしてきたのか、どうやってポケモンを育ててきたか、面白かった出来事、出会った変なポケモン。

「君があの事件に関わっていたのは知ってるよ」
「…!あ、ありゃ…お恥ずかしい…」
「…君は、レックウザを知っているかい?」
「…聞いたこと…あるような…ないような…」
「…そうか。」

ユイは深く帽子をかぶり直すと、カプリに向かって右手を差し出す。

「そろそろ僕のポケモン達が帰ってくる。じゃあカプリ。また会おう。」
「あっ、はい!」

細く白くヒンヤリとした右手。恐る恐る握り返すとカプリは寒気に襲われぶるりと震えた。そしてユイは背を向け、建物の外へ向かった。

「…あれ…?ポケモン回復…してたんじゃなかったのかな…?」

追うように外へ出たが、既にユイの姿はそこに無かった。強い風に吹かれ、飛びかけた帽子をおさえる。

(…いなくなっちゃった……。でもなんだかまた会える気がするよ。その時は…)

カプリはいつの間にか力を入れていた右手を開き、ポケモンセンターへ戻ることにした。


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