▼2012/07/02
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「次触ったら…殺す!」
「はいはい」
「…何があったんですか。」
「噛み砕いて、水の波動をくらわせてやる!」
「はいはい」
「…何が…あったんですか。」
風呂場から最初に入った部屋に戻る。俺はウルガモスの熱風(弱)で全身乾燥中。あまりこういうことは言いたくないが……さっぱりしたぁぁあ!…これは癖になりそうだ。お湯って…気持ちいいんだな。…帰ったら自慢しよう。
「そういえば自己紹介がまだでしたね。」
「おせーよ。」
「私はトリトマ。彼はガーメイルのクロッカスです。ここはカフェ"むしのさざめき"。もうすぐ開店ですよ。」
「俺はリン。門…じゃなくて…ええと…旅をしている。」
「の割には軽装ですね。」
「るせぇ!」
そん時ガロン!と音が鳴り、勢いよく店の扉が開かれた。客か?
「遅刻したん!!おはざまーす!」
あの羽は…モルフォンか。なんだこの店…蛾しかいねーの?気持ち悪いな。
「おはようポプラ。もう仕込みは終わってますよ。」
「えっ!まじ?てかクロ!なんで起こしてくれなかったん!」
「起こしたよ。二度寝したんでしょ。」
「う…!」
なんだこいつら。アホか。
ポプラと呼ばれたモルフォンは、カウンターの奥にかかったカーテンをめくり中へ一歩足を踏み入れた体勢で固まり、ゆっくりこちらへ振り返る。
「なんだ?そのアブソル。」
「ああ、お客さんですよ。」
「ちげーよ!」
「ふーん。モフモフしていいん?」
「触ったら殺す!」
「わー!殺されるん!」
ポプラはカーテンの奥へバタバタ走る。なんなんだこいつ。
「あいつもここで働いてんの?」
「ええ、キッチン担当ですが。」
「ふーん。で、ここ…」
俺の言葉は、カーテンの奥から聞こえてきた「わぁーっ!」という声にかき消されてしまった。
クロッカスが慌ててカーテンをめくりあげ、中の様子を見ている。
「ない、イバンのみがない。今日城にもらいに行くんだったん。」
「ポプラ…今すぐ行って。平日だしお客さんはまだこないさ。」
「わかた!いってくるん!」
…城?もしかしてここへくる途中に見えたでかい城か?…気になる。
「お…俺も行ってやってもいいぞ!」
「え?」
「だから!俺も行ってやってもいいっつってんだ!」
「ふふ、リン君は城へ行きたいようですよ。」
「なるほ!んじゃ、一緒に行こっか!あらためて、いてきまー!」
へへ、やったぜ。
俺はポプラと一緒に外へ出た。…そういや雨…降ってない。何時の間にか止んでいたようだ。街は俺がきた時よりも眩しくて、思わず目を細めた。…すげえ、これが街…。街ってこんなだっけ?
な!なんだあの色んな色したなにか!ぼんやり空に映ってる。
「何見てるん?」
「あの…あのあれ!あれだよあれ!」
「あれ?」
「そ!色んな色の!」
「ああ!虹なん!」
「にじ?」
「雨降った後に、ぽやーんとでるん。時々。なんでかなー?よくわからないけど。」
「へぇ…持っていけるのか?」
「触ったことないからわからないん!」
「…。」
…よし、お土産はあれにしよう。
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リンの無知っぷりがやばい。