memo
ドラクエ3プレイ中2

ゆうしゃ(おんな)セクシーギャル
せんし(おとこ)ちからじまん
とうぞく(おとこ)みえっぱり
まほうつかい(おんな)きれもの


でやってます小ネタ2
これみえっぱりじゃなくて人見知りでは?と思いながら書いてました
みえっぱりってどんなんだっけ


***


一日王女

宿屋にて、盗賊は割り当てられた部屋で魔法使いと二人で微妙な沈黙に包まれていた。先程まで勇者と戦士もこの部屋にいたのだが揃って出掛けた後で、そのまま魔法使いも出ていくのかと思いきや彼女はこの部屋に留まった。盗賊は魔法使いがこの場に残った理由――話したい用件について心当たりがあったので彼女が切り出すまで待っていたのだが、一向に口を開く様子がない。扉近くに寄りかかったままじっとベッドに腰掛けた盗賊を観察してくる。いい加減気詰りなので盗賊は魔法使いに助け船を出してやることにした。
「話があるんだろ。さっさと言ったらどうだ」
むっつりと、いかにも不機嫌ですといった対応だったが魔法使いに堪えた様子はない。これは他のパーティーメンバーにも言えることで、お前らなんでそんなに色々気にしないんだと常々盗賊は不満に思っている。
魔法使いはしばらく落ち着かなげにしていたが、ようやく決心がついたらしく顎を引いて盗賊をみすえる。武器を握る手にぎゅっと力が籠もった。
「じゃあ言うけど。私達、勇者にもっと慣れた方がいいと思う。いつまでもこのままじゃいられないんだし」
「………」
「おい無視すんな、何だその顔」
魔法使いの憤然とした意見が聞こえたが、盗賊は盗賊で苦いものを噛み潰した顔をしている。
今現在、勇者はパーティーメンバーの誰かしらにくっついて離れようとしない症状が出ている。以前なら気力体力尽きるまで宿に泊まろうとせずあれはあれで辛かったが、ここ数日は日のあるうちから宿に入りパーティーメンバーとなんとか交流を図ろうと涙ぐましい努力を続けている。
原因はちゃんとあった。とある国の王が気軽に王様をやってみないかと持ちかけたのをこれも勇者が軽率に「はい」と答えてしまったからである。絶対にあの勇者は竜王に世界の半分をやろうと言われたら「はい」と答えるタイプだ。
後に聞いたところによるとその王様はそんな風にして頻繁に王位をポイポイ投げているらしく、大臣などは既に五回も王様をやったことがあるという。のみならず兵士や国民、王の関係者までもがまたかという反応だったので、あの国ではよくあることだったのだ。
だが勇者を始めとした我がパーティーメンバーはその段階ではそこまでその国の内情に詳しくなく、あれよあれよという間に引き離され身ぐるみを剥がされたと思ったら、王様仕様に飾り立てられた勇者が王女として呆然と玉座に座っていたのである。勇者からしてみればいくら探しても共に旅してきた仲間は見つからず、道具も装備も取り上げられた。出会う人は旅人の勇者ではなく王女としてのみ扱ってくる。国の外にも出られないしで、やっと本来の王様を見つけて女王を返上し仲間達がぞろぞろと勇者の前に出てきたとき、勇者は膝から崩れ落ちた。それから勇者のべったりが発動して戻らないのである。
実は勇者が王女様をしている最中仲間たちはずっとその後ろを隠れて尾行しており、それを知った勇者が私抜きでそんな楽しそうなことをと本気で悔しがって、あの時間を新たな忍びの技の習得の時間として楽しんでいた戦士に是非その技を極めたいと勇者が志願すれば裏表のない戦士は一も二もなく受け入れて、つまりはそういう理由で二人して町に出かけていったのである。
これも後から聞いた話によると、勇者がなぜ王座に座ることを承諾したのかといえば、王様になったらあの城の開かない扉や宝箱を取れるかもしれないと思ったからだそうだ。そんなわけあるかと他の三人は力の限り突っ込んだ。勇者はちょっと嬉しそうにしていた。
普段あれだけ堂々と民家やときには王城、井戸に至るまで物色しまくり、盗賊が本職の己ですら内心戦かせている人物の強欲さに引けばいいのか脱帽すればいいのか。
「……あの勇者と?」
色々混ぜ込んだ苦味のある返答はばっさり小気味よく切られる。
「どの勇者でも、よ」
今のちょっとめんどくさい勇者でも、そうでないときの勇者でも。
真っ直ぐに相対する魔法使いと、どこか後ろめたい思いを抱えている盗賊とでは睨み合いは分が悪い。
あのとき、真紅の王の衣装に身を包んだ勇者を前に咄嗟に隠れたのは盗賊だった。戦士と魔法使いはそんな盗賊の行動につられて、後はめったにない体験にどちらも面白がって止め時が分からなかった――というのが尾行側の真相である。
あのときの心情を思い返すにつけ盗賊は何とも言えない気持ちになる。
国お抱えの戦士もとい兵士、魔法使いはいても盗賊はいない。勇者が王族から出たこともあるし、逆に勇者が国を開いて王となった例もある。盗賊だけが違うのだった。
必要以上に己自身を卑下するつもりはないし選んだ職業を後悔もしていないが、咄嗟に表れた行動に盗賊のなかで決着をつけなくてはならない何かがあるのは確かだった。
「今のままじゃ旅が進まないのは分かってる」
「ええ、そうよね。それで?」
どうやら魔法使いは「はい」以外認めないつもりのようだ。
勇者が王女として過ごした期間はごく短い間で、元の旅人としての勇者の方がしっくりくると納得の声もありつつ、それでも惜しむ声も多かった。本人は話を聞いたり伝言を伝えただけだと言っていたが、稽古をつけて欲しかったと言う城の兵士もいたのだ。
魔法使いの外れない視線はここが変わり時だと盗賊に突きつけてくる。
戦士はあの感じだから心配はいらないとして、残るは後衛組の盗賊と魔法使いだ。魔法使いがこうしてわざわざ言ってきたところからするに、魔法使い自身も何らかの躊躇いがありしかし今はそれにこだわっている場合ではないと盗賊と自分自身に発破をかけにきたのかもしれない。
この先激しくなるだろう戦いのなかで、命を預け合う相手だ。何が切っ掛けで全滅に繋がるか分からない。同じことを繰り返すわけにはいかなかった。
盗賊はこれみよがしに笑顔を作る。にっこりと、擬音がつきそうな笑顔である。
「どうやらお互い、無理やりにでも勇者に慣れなきゃいけないみたいだな」
なにせ盗賊である自分を引き入れたのは勇者なのだから。盗賊だからできることもあるだろう。
提案通り勇者だけでなく魔法使いの心情にもなんとなく気付いていると匂わせたのにも関わらず、当の魔法使いは分かればいいとそっけなく対応して体を起こした。背を向ける。
「――私も、このメンバーで旅が続けられて、良かったと思ってるから」
きれものの魔法使いにはそぐわない、どこか弱々しい口調だった。
盗賊は俯いて、顔が感情に歪むのに任せる。
――私“も”、ときたか。本当にどこまで分かっているのか。
そのまま出ていこうとするのを盗賊は立ち上がり、身形をざっと整えて追いかける。
「待て、俺も行く」
勇者と戦士を迎えに行くんだろ、と声をかけて先に部屋を出て扉を抑えて待っていると、ようやく魔法使いから――旅を共にする仲間から、微笑みらしきものが返ってきた。

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6th.Dec.2020


 
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