memo
ドラクエ3プレイ中

ゆうしゃ(おんな)セクシーギャル
せんし(おとこ)ちからじまん
とうぞく(おとこ)みえっぱり
まほうつかい(おんな)きれもの

でやってますという小ネタ。それぞれ名前を付けてますがそれで書くのは恥ずかしいので職業名で。
戦い方や旅の仕方は慣れてきたけどまだ当人同士の交流はぎこちない感じ
セクシーギャル難しい


***



うさぎのしっぽ


「これを……?」
封印されていた旅の扉を抜け、新しい大陸に進んだ一行はまず土地勘の把握と現状必要な装備及び金策のため、ただひたすらあちこちを歩き回り数多くのモンスターと対峙した。そうして今回パーティーメンバーに配られたのはふわふわとした可愛らしいものだった。
戦士は掌の上に乗せられた物体を当惑気味に撫でる。途端に顔つきが変わった。手触りが抜群によかったのだ。誘惑に逆らえずにそのまま撫で続けて他の三人の様子を窺う。パーティー随一の賢さを誇る魔法使いは早々とリーダーからの贈り物を道具袋にしまいこみ、当人は何かしらの思案をしているようだった。彼女はこの手の勇者からの贈り物をあっさり支給品と言う。そのための資金は四人全員で体を張って稼いだものだから感覚的には間違ってはいないのだが、それにしても興味がなさすぎる。戦士は未だに撫でる手が止まらないというのに。
一方で渋っていたはずの盗賊は勇者から、戦闘中に色々盗んでくれるおかげで助かっているそのお礼だと自尊心を刺激されてあっという間に手のひらを返していた。そっちの意味でも素早いのか。普段のみえっぱりはどうした。いやみえっぱりだからこそ煽てに弱いのか。
盗賊の彼と戦士の男二人はどうにも揃って女性陣に手玉に取られている気がする。しかし戦士はそれが嫌ではなかった。盗賊がどう思っているかは知らないが、少なくとも戦士はこのやり方とバランスが自分達に合っていると思う。
お金の管理を始め、次へ向かう目的地の選定などパーティーの最終的な判断は勇者に一任されている。それが勇者と呼ばれる者の気質なのか、気付けば自然とそうなっていた。或いは彼らの旅路の行く先々にまるで導くようにかつてアリアハンの勇者と言われたオルテガの――自分達がリーダー役を任せている勇者の父親の痕跡が、星屑を散らすように残されているからか。
勿論戦士含め他の三人も意見を言うが、それでも最終決定権は勇者にある。その勇者の意思になんとなくでも付き合ってやろうという空気が三人の間に芽生えつつあるのは確かだった。勇者とは説得力の代名詞なのか、と戦士は考えることがある。
とにもかくにもそうして今回渡された装飾品は、絶対に身につけろと言われたものではない。無駄遣いになっちゃうけど、と差し出されたそれを戦士は相変わらずふわふわと撫で回している。盗賊もその目利きで検分している。魔法使いは勇者に近寄って残金の確認を始めた。今夜の宿代でも気にしているのだろうか。
戦士は指の間から見える毛の固まりに目を落とす。この世にはどういうわけか性格が一変してしまうアイテムや本があって、その一つがこれだった。運があがるが、性格はこれまでのものとは違ってしまう。今までこうした効果のものは渡されることなくすぐに共有の道具袋にしまいこまれていた。勇者からも使う必要を感じないときっぱり明言されていた。その後に、そのままの皆でいいから、と付け加えられて胸の内がくすぐったくなったのを覚えている。
だから戦士は今回一人一人に手渡されたモノにかなり動揺していたのだ。ただ持っていて欲しいだけだと言われ、使わなくていいことにほっとした。戦士たるもの何を軟弱なと言われるかもしれないが、自分の意思とは関係なく強制的に人格を変えられるというのは――少し、こわい。
頭のいい魔法使いや盗賊はそんなこととっくに分かっていたのだろう。全く平然としたものだ。戦士は手の中の幸せな感触から離れ難く、無心に毛の塊と戯れている。しあわせものになるというその装飾品は確かに持っているだけでも、触れているだけでも心和む存在だった。
ふと魔法使いと話し込んでいた勇者がうさぎのしっぽをまだ手に持ったままの盗賊と戦士をそれぞれ等分に見て、
「可愛かったからね」
とほのかに笑って言う。確かに、とすぐさま全力で賛同しようとした戦士はしかし、気持ちいいでしょ、と小さく首を傾げられての後追い発言に開けようとした口を閉じた。なんせセクシーギャル。夜更けに訪れた民家で寝ぼけた人妻にまるで不貞を働こうとしたかのような言動を取られた人物である。そもそもそんな時間に民家に突撃するなという話なのだか、どうも戦士は勇者のこういった手合の言動が慣れなくて気まずい思いをすることがあった。
その容姿も体格も所作も、男とも女ともつかぬ曖昧さを持った人である。女と知って驚かれることもあれば、無邪気な子供が疑うことなく性別を見抜きかっこいいと褒めそやかしたりもする。勇者自身の性別ははっきり決まっているのに、どちらにも見えるし、どちらにも取れる。戦士達が戴く勇者はそうした一癖がある人物であり、同性だから軽く受け流したり、逆に異性だから照れたりと言ったような決まった態度に出れないことがある。今がそうだ。要するに、この勇者の独特の雰囲気にまだ慣れていないのだろう。
助けを求めて戦士は同じ状況に置かれた盗賊にそっと目配せで救難信号を送った。送られた方はそっと目をそらす。お前もか。こういうのには慣れていそうなのに。
勇者だけが気付かない何とも言えない空気を救ったのは魔法使いだった。手持ちの武器をこつんと勇者の後頭部に当てる。淡々と判定を下した。
「はい、アウト」
「ええっ、今ので?厳しくない?」
「コンプライアンス班として今のは見過ごせません」
「ううん、そっかぁ。気を付けます」
頭を抱え、これじゃ何も言えないいっそ無口キャラでいくかと思い悩みながら無造作に髪をかき回す勇者の隣で魔法使いが戦士と盗賊に向けて頷き、手招きされる。これからの方針を話すのだろう。戦士は盗賊と顔を見合わせて、とりあえずまだうさぎのしっぽは撫でながら我らが勇者の元に集合する。まだ旅は始まったばかりなのだ。
「――いやもういいだろ、どんだけ気に入ったんだよ」
盗賊の戦闘中の如く素早い無慈悲な切込みが戦士の耳に突き刺さったが、そこは素知らぬふりをした。戦士は力も体力もあるので打たれ強いのである。



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2nd.Dec.2020


 
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