イケメン



ユーリに首を絞められながら着いたデイドン砦には、たくさんの騎士がうろついていた。

それはもう、どこを見ても一人は視界に入るくらいの騎士がいた。



「ユーリとユイを追ってきた騎士でしょうか?」

「どうかな。ま、あんま目立たないようにな。特にユイ」

「ええ!?」

「そうですね。慎重に行きましょう」

「同意しないでエステル!」

「んじゃ、さっさと砦を抜けますか」



なんかユーリのスルースキルがどんどん上がってきてる気がする。

そしてエステル。君はなんでそんなに笑顔なんだい?

そんなに私の反応が楽しいのかい?



「何?なんなのこの扱い?」

「さあな」

「適当に誤魔化さないでください。いや、それよりエステルも・・・」

「エステルなら向こうに行ったぞ」

「・・・」



・・・もう泣いていいかな。



「しゃあねぇ。オレはエステルのとこ行くけど、どうする?」

「・・・適当にこのへん歩いとく」

「あんま遠くに行くなよ」

「はーい」



大丈夫。この砦内からは出ないよパパ。

ちょっとイケメンに会いに行くだけだから。



「さて。外壁の上に行きますか!」










「ふぅ・・・」



ユーリと別れ、今私は外壁の上にいる。

大変だった。騎士の目を盗んでここまでたどり着くのにすごく大変だった。

私はただイケメンに会いたいだけなのに。



「・・・?」



あれ?確かこの辺にデュークがいたはずなんだけど・・・?

怪しいことを承知でキョロキョロしていると、ふと自分に影がかかった。



「何をしている」

「にょわあああああああああああ!?」



あまりにいきなりすぎて変な声でた。にょわああなんて初めて言ったよ。

心臓をフル稼働させながら後ろを振り向くとアラ不思議。

まさかのデュークが思いのほか至近距離で立っていた。



「あーびびった・・・」

「・・・」



さり気に驚いたことを口に出せば、デュークからの無言の視線。

あれだな。質問に答えろ的な意味だな。



「ちょっと探し物をしてました」

「そうか」

「・・・」

「・・・」



はい、会話終了。

こんなに短い会話は滅多にないよ。

先生に答えろって言われて回答した時並に短いよ。



「・・・あ」



特に話すこともなくハルルの方角を見つめれば、小さいが青い影が見える。

あれは確か・・・



「ブルータル、だったかな」

「!」



HP339000、弱点無しのギガントモンスター。

仲間とか呼ぶしEXP稼ぎにはちょうどいい魔物なんだよな。

はいそこ!なんで覚えてるの?気持ち悪っ、とか考えるな!



「・・・ギルドの者ではなさそうだな」

「へ?」

「だが旅の者にしては軽装すぎる」

「・・・」

「何故魔物の名がわかる?」



そうか。確かに明らかに一般人オーラ出してる人間が魔物の名前言ってたら怪しいな。

ただの魔物オタクとか言って誤魔化そうか。

・・・無理だな。



「・・・友達に魔物に詳しい人がいて、その人から聞きました」

「・・・」

「・・・う、嘘じゃない!信じてくれ!」

「・・・ふっ」



笑われた。

つーかどこに笑う要素が?



「不思議なやつだ」

「え?」

「おまえの周りには、いつも人がいるだろう」

「・・・まあ」

「おまえのその雰囲気は、周りの笑みを消さないだろう」

「・・・?」

「・・・名を聞いてもいいか?」



んんんんんんん?

正直話の展開に全然ついていけない。

私の雰囲気?別に普通じゃね?

・・・とりあえず名前言えばいいのか?



「ユイです。あなたは?」

「デュークだ。それと、敬語は別にいい」

「んじゃ、デュークで!」

「ああ。・・・また会えることを願う」



そう言って、デュークは私の横を通り過ぎた。

私の頭を撫でて。



「っしゃああああああああああああああああああああ!!」



やばい!デュークと仲良くなっちゃった!

しかも頭撫でられちゃったよ!ほほほーい!!



「ふへへへへへへへへへへへへへ」



外壁の上で、私はしばらく悶えているのであった。





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