そんなとある一日


「真っ黒くろすけでっておいでぇー!」



ジブリで有名なあの歌を熱唱しながら、箒で床を掃く。

仕事は新人さんが頑張っているらしいので、今日は休み。

あまりにもやることがなくなった私は、どこかへ出かけたユーリのために掃除をすることにした。

け、決してエロ本が見つかればいいなとか思ってないんだからね!



「出ないと・・・しーろく染めちゃうぞ?」



あれ?歌詞こんなんだっけ?

さすがにもう覚えてないな・・・。新しいアニメばっかに気を取られすぎたせいか。



「お次に・・・目玉をくりぬいて。

 つまようじでぶっ刺して。

 炎でメラメラ焼いちゃうぞ!」



・・・違うな。

そもそもこんなパートあったっけ?

唸りながら必死に考えていると、後ろからドアの開く音が聞こえた。



「・・・何歌ってんだ」

「あ、おかえりユーリ。今ね、必死に歌詞を思い出してたの」



歌詞どころかメロディーさえ出ないけど。

そう言うと、ユーリは呆れたように溜め息を吐いた。



「近くにいたガキがびびって逃げてったぞ」

「・・・マジ?」



そんなに大声で歌ってたのか。

やば、子どもに変なトラウマできたらどーしよ。



「ったく、歌うならもうちょいマシなのにしてくれ」

「へーい」

「・・・わかったか?」

「はい」



なんで二度聞いたし。

あれか、そんなに私は人の話を聞かないと思われているのか。

文句を言おうとユーリを見れば、その場にユーリはいなかった。



「神隠し・・・!?」

「ちげぇよ。こっちだ」

「あ、ベッドか」



声のした方に振り向けば、そこにはベッドに寝転がるユーリの姿が。

ちょ、早いな。



「・・・あのさ、今私が何してるかわかる?」

「歌ってたな」

「それ以前に掃除してるんですけど」

「箒持ってるしな」

「・・・手伝おうという気はないのかね」

「ないな」



即答かよおおおおおおおおおおおお!

あまりに平然と答えるものだから、つい箒を置いてユーリに詰め寄った。



「酷くね!?いやもうほとんど終わってるけどさ!」

「じゃあいいじゃねえか」

「違くない!?色々違くない!?」

「なんだよ。・・・かまってほしいのか?」



全力で突っ込んでいると、何をどう思ったのか。

ユーリはニヤリと笑い、腕をのばして私の腰にまわす。

驚く間もなく、そのまま引き寄せられる。



「おわっ・・・!」



気が付けばユーリの顔が目の前に。

つまり、私は今ベッドに倒れているのだ。・・・腰に腕をまわされたままで。



「ちょ、ユーリさん?」

「ん?」

「近いんですけど」

「そうだな」



そうだな、じゃねーよ。

なんだこの状況。傍から見たら色々勘違いされるぞ。

ふとユーリを見ると、こちらをじっと真顔で見つめている。



「な、なんですか?」

「・・・このままキスできそうだな」

「・・・はい!?」



真面目な顔してこの人は何を考えているのだろう。

ユーリの思考回路が気になり始めた時、唇にかかるユーリの吐息。

ってはいいいいいいいいいいいい!?



「ゆゆゆゆーり!?ちちちちちちちちかいんですけど!!」

「ユイ・・・」



心臓がフル稼働している音を聞きながら、離れようと顔を後ろに引く。

しかし、そこで引き下がるユーリではなくて、後頭部に手をまわされる。

そのままユーリの顔が近付いてきて・・・










「ユーリ、先日騎士ともめた件で話が・・・・・・!!!???」










ドアの方から聞こえる、フレンの声。

固まったユーリをチャンスと思い、勢いよくベッドから立ち上がる。

ドアでは、ベッドを見ながら真っ赤になって固まっているフレンが。

身動き一つとらない二人を置いて、私は全力で部屋を飛び出したのだった。









(ユ、ユーリ!!君というやつは、ユイに手を出すなんて・・・!)
(お、落ち着けフレン!)



(い、今のはマジでやばかった・・・!!)





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