貴族と平民



「昨日は昨日で騎士団とのもめごとに借り出されるわ、

 今日は今日で、水道魔導器が壊れるときたか」

「大変だね、ユーリ」

「まったくだ。なんだって、この下町は、

 毎日毎日騒がしい事件が次から次へと起こるんだろうな」



ホントまったくだよ。


広場に着くと、下町のみんなが水を止めようと必死に

砂袋を投げていた。指示を出しているのはハンクスさんらしい。



「なんとしても止めるんじゃ!」



すごいな、ハンクスさん。めっちゃ元気だ。

実はまだ40歳ぐらいだったりして。


・・・うわ、なんかありえそうかも。


私がハンクスさんを見ていると、ユーリはいつの間にか近くで

砂袋を投げている男の人に話しかけていた。


い、いつの間に・・・!?



「なんだ?どでかい宝物でも沈んでんのか?」

「ああ、でもユーリには分けてやんねぇよ。来んの遅かったから」

「はっはっは。世知辛いねえ」

「そう。世知辛い世の中なんだよ。魔導器(ブラスティア)修理を頼んだ

 貴族の魔導士様も、いい加減な修理しかしてくんないしな」



冗談を言い合ってはいるが、その会話の裏にはどれほど貴族が下町の事を

嫌っているか充分にわかる。


貴族に対する愚痴を零していると、話し声に気付いたのか

ハンクスさんがこちらを向いた。



「ユーリめ、やっと顔を出しおったか!」

「ハンクスさん、ユーリはここに来るのめんどくさがって・・・いたっ!」

「じいさん、水遊びはほどほどにしとけ。もう若くねえんだから」



ハンクスさんにユーリがめんどくさがっていたことを報告しようとしたら

無言で叩かれた。


じ、地味に痛いぜ・・・。



「その水遊びをこれからおまえさんらもするんじゃよ」

「「げっ」」



ハンクスさんまで私が叩かれたことを無視し、手伝えと言ってくる。


・・・手伝うけどさぁ、もうちょっと心配的なものを

してほしいというか・・・。


私の願望は虚しく、ハンクスさんは作業に戻るのだった。





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