報告?



市民街を通り過ぎ、下町へ続く坂道を歩こうとした時、

後ろからガチャガチャという鎧の音が聞こえてきた。



「そこの脱獄者達!待つのであ〜る!」

「ここが年貢の納め時なのだ!」

「ばかも〜ん!能書きはいいから、さっさと取り押さえるのだ!」



振り返れば、そこには愉快なデコボコたち。

小隊長のルブランさんまでいらっしゃる。

というか今の台詞、どこぞの部長みたいだな。



「ど、どうしましょう?」



エステルは後ろの騎士達を見て、困ったように視線を送る。

そんなエステルの様子にユーリはキョロキョロと地面に視線を向けている。



「んなもん・・・」



ちょうどいい感じのものを見つけたのか、ユーリはそれを拾う。

さあ、来るぞ。ユーリの伝説の技が・・・!



「こうすんに決まってんだろ!」

「ごがっ!」
「もふっ!」



ユーリが勢いよく投げたそれ・・・石はデコボコの額に当たり、デコボコ戦闘不能!

ユーリはそのうち石で人を殺せると思うんだ。



「下町に逃げるぞ」



ユーリを見ると、すでに下町に向かっている様子。

なんでこう先に行っちゃうかなあ!?






坂を下りて下町に着くと、水道魔導器(アクエブラスティア)の前にいたハンクスさんがこちらに気付いた。



「おお、ユーリ!ユイ!どこに行っとったんじゃ!」

「ちょいとお城に招待受けて優雅なひと時を満喫してた」

「フレンのエロ本を探しに行ってた」



見つからなかったけど。

はっ!?まさかフレンは妄想だけd((殴



「痛っ!なにすんの!」

「なんで叩かれたのかわかんない、って顔だな」

「実際わからないからね!私Mじゃないよ!」

「知るか」

「何をのんきな・・・その娘さんは?」



城に行った=牢屋に入れられたと分かっているハンクスさんは、

あまりにもケロリとしている私達に呆れ話題を変える。

話題になったエステルは、ハンクスさんのもとへ駆け寄り頭を下げた。



「いや、こりゃご丁寧に・・・」



ハンクスさんもエステルにつられて頭を下げる。礼儀正しいね、二人とも!

ユーリは絶対、絶対こんなことしないよ!



「おまえ、今オレに失礼なこと考えただろ」

「何言ってんの?そんなこと考えてるわけないよ・・・と言ってるのに

 何故私の頭を鷲づかみする?」

「本当か?」

「本当だよ。見てこの嘘一つ付いてないキレイな瞳!」



そういうと、私の瞳を覗き込むユーリ。

わお、イケメンが近いよ。



「・・・」

「・・・」



そして見つめ合うこと数秒。

私の頭から、聞こえるはずの無い音が聞こえた。



「いだあああああああ!!」

「嘘付くな。おまえの目からは邪な感情しか見えねぇ」

「それはフレンは何妄想するか考えてああああああああああ!!痛い痛い!!」



ギシギシと頭蓋骨の軋む音が聞こえる。

ちょ、これ以上はマズイんじゃないかな!?



「いや、それよりも騎士団じゃよ。

 下町の惨状には目もくれずおまえさんらを探しておったぞ」

「ハンクスさん!?今どう見てもそれどころじゃないよね!?

 人の命を『それより』で片付けないでくれませんかねぇ!?」

「やはり騎士団ともめたんじゃな」

「ハンクスさあああああああああん!!」



明らかに私のこと視界に入れてるよね!?

なんで無視すんの!?むしろなんで無視できんの!?



「ま、そんなとこだ。ラピードは戻ってるか?」

「ああ、何か袋をくわえておったようじゃが・・・」

「その袋は?」

「おまえさんらの部屋に置いてあるはずじゃよ」

「なら、あとで取りに行って振ってみな。いい音するぜ。モルディオも楽しんでた」

「モルディオさんに会ったのか?」

「私を挟んで二人で会話するんじゃない!それとユーリ!いい加減離してくんない!?」



なんだこれ。これが下町の人間か。そうなのか。

ああ、向こうで水道魔導器(アクエブラスティア)を見上げてるエステルが遠いよ・・・。



「当人は逃げちまったけどな。アスピオって街の有名人らしいんだ」

「・・・逃げた?という事は、やはりわしらは騙されて・・・」



ハンクスさんが悲しそうに目を伏せる。

皆のために、必死に修理費を集めたのに・・・。

私も悲しいよ。誰も今の状況から助けてくれなくて。



「ああ、家も空家だったし、貴族って肩書きも怪しいな」

「・・・そうか」

「・・・ハンクスさん。そんなに落ち込まないでよ。

 大丈夫!困った時には何でも解決!がモットーのこのニートに任せいたたたたたた!!」



仕返しに少し悪口を言ってやろうとすれば、先ほどよりさらに力を入れられた。

何コレ!なんのイジメですかだだだだだだだだだだ!!





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