魔物との戦闘



「おお、薄暗いな」

「用水路か。あのおっさん、マジで胡散くせぇな」



はしごを下りると、少し広い用水路に出た。

水の流れる音が静かに聞こえ、誰もいないことを告げる。



「行くぞ」

「はい」

「おー・・・お?」



ユーリの言葉に従い、足を進めようとした時、何かが動く。

よく見てみると、ネズミのような、

しかしネズミにしては大きい魔物がこちらを見ている。

・・・なんか癒される。



「ま、魔物です?」

「なんで疑問?あんなでかいネズミは普通いないよ!」



でかいネズミ・・・ラトラトは、私たちを見ながら増えていく。

いつの間にか、ラトラトいっぱいコレクション。

そんなのジブリだけで充分だわ!



「お、多いです・・・」

「気を抜くなよ、特にユイ」

「私!?なんで!」

「顔が笑ってた」

「・・・」



そりゃ、癒されてましたから。否定できませんよ。

そんな私はエステルとは正反対のようだ。

エステルは、初めて見る魔物に緊張気味だ。



「しゃーない、真面目にやるか」

「いつもは真面目じゃねえのか、よ!」



突っ込みながらも、ユーリはラトラトを一匹倒す。

戦闘開始の合図だ。腕が鳴ってるよー!



「私はいつだって大真面目さ!」

「嘘つけ!」

「嘘つかないよ!私が真面目じゃない時は世界が平和な時なのだよ!」

「ほとんど真面目じゃねえよ、それ!」



会話をしながらも、確実に敵を倒していく。

残りわずかとなったとき、私は何気なくエステルを見る。

そして、エステルの後ろに忍び寄る、影。

気付いた瞬間、私はエステルに向かって叫んでいた。



「エステル!そこ動かないで!」

「え・・・?」

「おりゃああああああああああ!!」

「きゃあっ!」



エステルに叫んだ直後、エステルに向かい剣を勢いよく投げる。

当然エステルは驚き、目を瞑る。

真っ直ぐ飛んでいった剣は、エステルの足元にいたラトラトに当たり、倒れる。

エステルは、足元に突き刺さっている剣を見て目を見開いている。



「ちょ、大丈夫!?」

「え?・・・あ、はい!」

「ふぅ、まさかあそこに魔物がいるとはね・・・」



さすがに焦ったわー。

癒されるって言っても魔物だからね。危ないんだよ。

もしエステルの綺麗な肌に傷がついてしまったら・・・!考えたくも無い!



「おまえな。魔術使うとか、他に方法あっただろ」

「うん、ごめん。私も色々必死だったんだよ」



剣を投げるはないよね、普通。

選択肢で言うと、


 戦闘
 魔術
▽剣を投げる
 道具
 逃げる


こんな感じ?これなんてクソゲー?

一人で突っ込んでいると、しばらく放心状態だったエステルが、

私の剣を両手で持ちながら駆け寄ってきた。



「ユイ!さっきはありがとうございます!」

「いや、私も剣投げちゃったし・・・怖かったでしょ?」

「大丈夫です!」

「ならいっか」



お礼を言いながら、投げた剣を私に渡す。

エステルは満面の笑みで私を見ており、私は安心すると同時に、

次の戦闘は大丈夫なのか不安になってきた。



「・・・よし。エステリーゼ、手つなごうか」

「え?」

「さっき見た限りだと、あの魔物は群れで攻撃してくるからさ。

 みんなで固まって動こう。その方が安全だし、エステリーゼも守れるし」

「・・・」



再びエステルが硬直してしまった。

よく見ると、顔が赤い気が・・・?



「ユーリも手つなごー」

「なんでだよ」

「三人で戦えば向かうところ敵なし、だぜ!」

「二人でも充分だったけどな」

「・・・まあね」



ユーリに手を差し出せば、ふい、と顔を逸らされてしまった。ちぇー。

若干ユーリの耳が赤い気がしないでもないが、

とりあえず再びエステルを見る。



「ユイ!」

「はい?」



エステルは、とても・・・とても嬉しそうな表情で私の名前を呼ぶ。

な、なんだなんだ?



「わたし、嬉しいです!そんなことを言ってくれたの、ユイが初めてです!」

「そ、そう?じゃあ、私が初めての人なんだね」

「はい!」

「・・・ユイが言うと、意味が違って聞こえるな」

「・・・それをユーリが言うか」



ユーリの呟きに軽く反応しながら、エステルに手を差し出す。

するとエステルは、本当に嬉しそうに私の手に自分の手を重ねる。

エステルの体温が伝わってきて、温かい。



「んじゃ、行こっか」

「はい!」



どちらからでもなく、繋いだ手を強く握った。

そして、ユーリを先頭に用水路を進んで行くのだった。





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