委員長と愉快な仲間達 | ナノ
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『あー、暇暇!何か楽しいことないの〜?』
「君の人生において"暇"はかなり貴重なんじゃない?」
『そうね、100%あんたのせいだけどね。…あ、もうこれひっくり返していいんじゃない?』
「…よっと…学校も昼までだと行った気にならないよねえ」
『テスト前だか何だか知らないけどさー。こんなに早く帰って何しろっつーのよねえ?』
「勉強だろ」
委員長とテスト
ジュー、と臨也が返したお好み焼きの音が辺りをつつんだ。
頼子がはあー、と大げさに溜息をつく。
『ドタチ〜ン、空気呼んでよー』
「その呼び方やめろ。…助言してやったんだ」
来神高校はテスト三日前になると、午前中授業のみで終了する制度になっていた。
何故かというと門田の言う通り、テストに向けて勉学に励むためである。
しかしそれはあくまで教師側の意図であり、生徒はそんなこと知ったこっちゃない!と遊びに出掛けるのが通例だ。
そして此処にいる頼子と臨也もその例にのっとった二人だった。
「そんなだからドタチンはモテないんだよねえ。見た目なら俺の次の次の次くらいに良いのに」
『……それ、自分で言ってて罪悪感とかないの?』
「何が?俺に罪悪感があるとすれば、万年ドベの人が勉強しないでいるのを黙って見てることくらいだ」
「万年ドベ?」
『…………』
門田が臨也の言葉を繰り返した。
臨也が言っているのは多分、テスト順位のことだろう。
自分で言うのもなんだが、門田自身の成績はそんなに悪くはない。
元々勉強はあまり好きではない自分が"悪くはない"のだから、学校自体のレベルは察してほしい。
…つまり、そんな学校でドベとなると…
「ほら、返事しなよ。万年ドベさん?」
にやり、といつもの嫌味ったらしい笑み。その先には、無意味におしぼりを弄る頼子がいた。
門田は思わず頭を抱える。
「お前…マジなのか?」
『臨也…何であんたがそんなこと知ってるのよ…!』
「さあ?」
『くっそー!その顔腹立つ!』
「あれ、委員長?」
表出ろ!と頼子が親指で外を差した時だった。
見慣れた二人がのれんから顔を覗かせる。
『新羅!静雄!』
「…あ?」
「さすがシズちゃん、0.1秒でガンつけてきたね」
「喧嘩はやめろよ。店が潰れる」
門田の一言で、静雄は ぐっと思いとどまり、代わりに持っていたジュースの缶を握り潰した。
この店は静雄のお気に入りでもあるのだ。
臨也はというと、そんな静雄に気落ちしたように項垂れた。
「なーんだ、つまらないなあ」
『静雄えらいえらい』
「俺は小学生か」
いや、小学生の方が幾分 制御がきくだろ。
お好み焼きを囲んだ三人がそう思ったのは言うまでもない。
「あはは、小学生の方が感情制御が上手グフォッ!!」
そうなるから言わなかったのに…
頼子は犠牲になった新羅を尻目に、出来上がったお好み焼きを口に含んだ。
『静雄達も食べる?』
「ノミ蟲が焼いたもんなんて食えるかよ」
「俺だってシズちゃんと同じテーブルはごめんだね」
『…ダメだこりゃ』
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