委員長と愉快な仲間達 | ナノ
1


“普通”になんて興味無かった。
類は友を呼ぶ、なんて言葉があるけど、違うね。
奇々怪々。昔からそういうものに惹かれていた。

“僕”がそれに寄っていっただけ。

ただ、それださ。




委員長と岸谷くん



彼女と初めて会ったのは中2の秋。
忘れもしない、保健室でのことだった。
“折原臨也が女子に殴られて保健室にいるらしい”そんな噂を聞いた僕は嬉々として保健室に向かう。

あの臨也が女子に殴られた?
なんて奇想天外!本当に彼は予想外の展開を俺にくれる!
同じ元生物部として誇りに思うよ!

そんな思いを胸に、保健室の扉を開けた。



「やあ、臨也!女子に殴られた気分はどうだい?」

『あ、折原の友だち?』



ベッドの傍にある椅子には見慣れない少女が1人。
けど見たことくらいはある。
山田頼子。数週間前、臨也のクラスに来た転入生だ。
確か委員長って呼ばれてたっけ。
臨也が他人の名前を出すことはあまり無かったけど、彼女の名前は何回か聞いたことがある。
だからなのか、“普通の人”の名前を覚えるのが苦手な僕でも記憶に残っていた。



「友達…まあそうだね。同じ元生物部の部員さ」

『元生物部?』



今年転入してきたばかりの彼女は去年の事件を知らないのだろう。
不思議そうに首を傾げた。



「去年の今頃に無くなったんだ。山田さんは何故ここに?」

『あれ、名前 教えたっけ?』

「ああ、臨也から聞いたんだ。あと噂でね」

『何の噂よ…』

「この間 校外学習で行った水族館で見た蟹に
美味しそう…って物憂げに呟いてたって」



聞いたままを伝えると、山田さんは頭を抱えた。
そして、それは昼前だからお腹空いてて…と言い訳。



「私は岸谷新羅、新羅でいいよ」

『新羅ね。あ、さっきの質問だけど、私が折原をここまで運んだの。色々あって思わずみぞおちにグーパンしちゃって…』



僕はてっきり、臨也が女子に恋愛絡みで頬を叩かれた程度だと思っていた。
しかし彼女は少し申し訳なさそうだ。っていうかグーパン?しかもみぞおち?

ベッドを見ると、未だ眠る臨也。
眉目秀麗とはよく言ったもので、男の僕から見ても綺麗な顔だ。
もちろん僕にそんな趣味はないし、世界一愛しいあの女性には劣るが。



『折原って本当綺麗な顔よねー。変な奴だけど』

「はは、でも僕は嫌いじゃないよ」

『なんかさ、ものの考え方が違うのよね。まあ人なんて同じ考えの人なんていないけど、折原の場合なんていうか…』



超捻くれてる。

そう苦笑して椅子から立ち、続ける。



『ま、嫌いじゃないけどね』



驚いた。
臨也に対しての感情が、僕と少し似通っていたからだ。
臨也は普通に接していれば“一般的な中学生”だ。しかし深く関わるとやはり変わっていた。
まだこの学校に来て数週間の彼女が、その違和感を感じたのなら…



『じゃ、私帰るね。あとはよろしく〜』

「あのさ、」



山田さんが保健室の度合いに手をかけた時、呼び止める。
僕に背を向けていた彼女が振り返った。



「委員長って呼んでいいかな」



お好きにどうぞ。
そんな言葉が返ってきて、委員長はにこりと笑った。


[ 12/23 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]