委員長と愉快な仲間達 | ナノ
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「それで、君達は何の話をしてたんだい?」



新羅が蹴り上げられた背中を摩りながら、尋ねた。
席は臨也と静雄を配慮して離れた所に座る。丁度 柱で静雄から臨也が見えない位置だ。
客は頼子達しかいないため、迷惑になることはなかった。



「委員長の成績についてさ」

「委員長の?」

『ちょっと!その話はもういいでしょ!恥ずかしいから!』

「だったら勉強しろよ」



門田のもっともな意見に頼子は眉間にシワを寄せた。



『何よー!さっきから人を馬鹿みたいに!』

「みたいじゃなくて馬鹿なんだろ?君みたいなのを底辺って言うんだろうね」

「…委員長はそんなに頭悪いのか?」



静雄が前にいる新羅に問う。
新羅は見ていたメニューから目を離さず、すぐに答えた。



「ん?委員長は頭良いよ」



は???

門田と臨也はここぞとばかりに?マークを浮かべる。
思ってもみなかった援軍が来た頼子は、そんな二人を見て笑った。



『よく言った!まあ 新羅のフォローなんて無いに等しいけどね!』

「は?ドベのどこが頭良いわけ?」

「委員長が頭良いのは事実さ。少なくとも僕よりはね」



新羅は親が学者なだけあり、記憶力も良く頭脳明晰である。勉学については、教師からも一目置かれているのだ。
何処ぞの妖精が「勉強は大切だ」と言ったから、という単純な理由だが、彼を動かすには十分だった。
そんな新羅が委員長の方が頭が良いなんて、一体何があったのか。



「一年生の時の校外模試があっただろう?委員長はそれで全国一位だったんだ」



ジュー

再び、店内の音はお好み焼きが焼ける音のみになった。
5秒程沈黙が辺りをつつみ、新羅以外の全員が頼子を見た。
頼子はここぞとばかりに笑う。



「…それはドベ一位の間違いじゃないの?」

「いや、正真正銘 全国一位さ」

『オホホホホ!聞いたか私の実力!ドベなんて所詮
ネタなのよネタ!!』

「二年も前の話だろ?」

「いや臨也、一概には言えないよ。勉強したからって、全国一位なんてそう獲れるものじゃない。元が良くないと」



自分の頭を人差し指で小突きながら新羅が言う。



「じゃあ何で学校の成績がそんな悪ィんだ?」

『え?勉強しないからでしょ』



さも当たり前のように答えた頼子に納得しそうになった静雄。
しかし いやそうじゃねぇだろ と思い直した。



「…何で勉強しねぇんだよ」



門田が静雄の心情を代弁する。
頼子は少し考えて首を傾げた。



『メリットが感じられない?』



それは"勉強"というものを根本から否定するものだった。
大体、学生が勉強するメリットなど考えても考えなくても結果は同じ。勉強する以外の選択肢はないのだから、それこそ考えるだけ無駄というもの。
皆それを理解して学生として生きているのである。



『勉強なんて楽しくないしやっても得することなんてないじゃん?』

「この学歴社会の中ではとても貴重な意見だね」



新羅は楽しそうに頼子の話を聞いていた。
これが家に帰ったらセルティとの話の種になるのだ。



「…何で模試はやる気になったわけ?」



臨也が興味なさげに聞く。
どうせくだらないことだろうと予想しての質問だった。



『だってママが一位獲ったら晩ご飯しゃぶしゃぶにしてくれるって言うからさ〜』

「小学生の駆けっこ か?」



門田が言った例えのあまりの秀逸さに珍しく臨也は感心する。
そしてやはり予想通りのくだらなさに呆れた。



「でもこのまましないわけにはいかないんじゃない?今年は卒業がかかってるわけだし」

『大丈夫大丈夫。何とかなるって』

「…………」



コテでお好み焼きを切りながら、ポジティブ発言の頼子。
臨也は黙ってそれを見ていたが、ニヤリと笑ってコテを頼子から奪った。


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