委員長と愉快な仲間達 | ナノ
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それから一週間後。彼女とは廊下で会えば雑談するくらいにはなった。
こういう関係を友人というのだろう。
私には友人と言える人が臨也くらいだったから異性の友人は新鮮だった。



『あれ、新羅じゃん』

「やあ 委員長」

『何してんの?』



最終の下校時間を知らせるチャイムが鳴るぎりぎり。
普通の生徒は帰ってる時間だ。



「委員長を待ってたのさ」

『私を?』



下駄箱に上履きをなおしながら首を傾げる。
僕は委員長に近づいて、笑った。



「付き合ってくれるかな」

『?…いいよ。どこに?』

「そうじゃなくて。恋人になってほしいんだ」

『……新羅、私のこと好きなの?』

「うーん、好き…かな?」



キーンコーン カーンコーン

下校時間のチャイムが鳴った。



『………とりあえず、どっか違う所で話す?』


















委員長に案内された場所は駄菓子屋だった。
適当に駄菓子を買っている委員長待って、外のベンチに座る。



『はいこれ』

「ラムネ?」

『私が奢るなんて超レアなんだからね!』



言い終わると、ぐびぐびとラムネを飲む。
僕も瓶の蓋を開けた。



『プハーッ!やっぱり放課後のラムネは最高だわ』



決して女らしい飲みっぷりではなかったが、彼女らしいと言えば彼女らしい。
瓶の中のビー玉はきらきら輝いていた。



『このビー玉ってどうやって入れてんだろ』

「製造の時、広口に成型しておいた瓶にビー玉を入れてから口を熱してすぼめるんだよ」

『へえ!博識〜!』



私の隣に座って、コロコロと瓶の中のビー玉を転がす委員長。
そろそろ本題に入っていいんだろうか。



「告白の返事、聞かせてもらえるかな」

『告白、ねえ…。何で私なの?』

「君が一番ドライに見えたからかな」

『ドライ?』

「人間関係について。女性って何事にも深追いする人が多いだろう?
しかも素直に答えると、決まって不機嫌になる」

『偏見じゃないの?』

「少なくとも今まで声をかけた子はそうだったよ」



僕の言葉に、委員長は目を丸くした。



『…付き合えたら誰でもいいわけ?』

「うん。私には心に決めた女性がいるからね」

『なんだそれ。じゃあその人と付き合えばいいじゃん』

「彼女が言ったんだ」

『…?』

「“私を愛しているというのは錯覚だ。他の子と付き合えば考えも変わる”ってさ」



今でも鮮明に思い出せる彼女が打った文字。
だから僕は知りたかった。彼女が言うように、この思いは錯覚なのか?
しかし彼女への気持ちは変わらない。
色々な女子に声をかけたが、心は動かなかった。全く、だ。



『そんなにその人のこと好きなんだ』

「うん、愛してるよ。世界一ね」

『あはは、映画みたいなセリフ!見てみたいわ その人』

「……見たら驚くんじゃないかな」

『どんな人よ。…でもその人、よっぽど自分に自信がないのね』

「え?」



首を傾げて委員長を見た。

自信がない?彼女が?
何故そんな考えにいき着くのか僕は不思議だった。



『もし今 新羅と一緒になっても、いつか離れていくって思ったんじゃない?』

「…まさか」

『自分には新羅を繋ぎ止めておくものがないって思ってるんじゃないかな。
それなら自分なんかより新羅に相応しい人と一緒にいる方が、新羅のためだしね』

「…………」



吃驚仰天。目から鱗とはまさにこの事だろうか。



『でもまあ本気で新羅が鬱陶しいって可能性もある…ってあんた聞いてる?』

「…ごめん委員長、ちょっと今すぐ彼女を抱きしめたいんだ」

『お、おお…』

「君と話せて良かったよ。ラムネご馳走さま」



僕は瓶を近くのゴミ箱に捨てると、自分の家に向かって走った。



『足 遅っ!』



そんな委員長の言葉は聞かなかったことにする。











「セルティただいブゲフッ!」

《抱きつくな 鬱陶しい!》

「照れ屋なセルティも可愛いなあ」

《(……………)》



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