一方、悠那が剣城を追ったのを先輩達も見ていたらしく、先程まで穏やかだった先輩達の表情が曇りだした。

「なあ、おい。やっぱりあれ…」
「だよな…」

「…?」

車田の言葉と同時に三国も頷き出し、他の三年や二年の反応がまるで何かに警戒するような目で悠那を見ていた。天馬はそれを見て、頭に疑問符を浮かばせた。それは信助や葵達も同じようで、何やら深刻そうに話す先輩達に目をやった。

「アイツも――じゃないのか?」
「けど、そんなに強くなかったじゃん」
「全て演技だったりして…」

話しの内容は小さ過ぎてあまり聞こえなかったが、悠那に関しての話しには違いない。所詮陰口なのだろうか、怪訝そうに悠那を見る先輩達の目は本気だった。キャプテンこそ今は居ないので、ストッパーが居ない。だけど、自分達だって仲間である悠那の事をとやかく言われるのは気持ちの良い物ではない。
すると、一人だけその会話を止めるストッパーが現れた。

「大丈夫ですよ」
「霧野…」

霧野蘭丸。失礼ながら一見見た時、女子だと思ってしまった。だが、言い方など見た目とはまるで別人のように見え、ちゃんとした男の子だった。霧野の言葉でその会話はピタリと止まり、視線はそのまま霧野の方へ。自分も霧野の方へ目線をやれば、そこには目の前で話していた先輩達とは違う勇ましく、それでいて優しそうな目をしていた。

「谷宮は、フィフスセクターの人間じゃない」
「けどよ…あれを見て疑うなっていうのが無理だと思うぜ?」
「だド」

車田の言葉に、天城もまた頷いて車田の意見に同意した。天城に吊られ、次々と頷いていく人達。だけど、それを見ても霧野は顔色を変えずに口を開きだした。

「アイツは、演技をする程器用じゃなそうですし。それに、」

――絶対宣言です!

「アイツ、本気でサッカーが大好きなんです」

その言葉に、思わず唖然としていた天馬と葵は思い切り頷いた。それも皆がビビる位に。だけど、それを見た南沢を抜く三年生達は再び微笑み、帰ってきた悠那の頭をぐちゃぐちゃっと撫でた。

『えっ、あの…え…?』
「感謝しろよ谷宮」
『え?!何、え?!』

更に霧野からの言葉に混乱する悠那だった。

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